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脳震とうを考える

 

 先日、中国で行われたフィギュアスケート、グランプリシリーズの男子競技のときに、日本の羽生結弦選手が試合直前練習で中国選手と激突し、脳震とうを起こした。その後、羽生選手は強行出場し2位に入った。この一連の行動に報道メディアは「感動」の言葉を付けた。

 果たしてそうだろうか? 各スポーツ界の先輩方やコメンテーターの中には、出場させない方が良かったという声があった、個人的にも同意見だ。現在、各スポーツにおける激突による事故、脳震とうなど起こった場合の処置は極めて慎重に行っている。今年、3月30日の東京ドームでの巨人阪神戦で阪神の西岡剛選手と福留孝介選手が試合中に激突したのは記憶に新しいはず。この後西岡選手は復帰までに2カ月以上かかった(もちろん打撲などもあったが)。

プロ野球界では開幕直後に起こった西岡剛選手と福留孝介選手との激突が記憶に新しい(写真=内田孝治)



 今回の羽生選手も3月の西岡選手も脳に関わる事故なのだ。海の向こうのアメリカではアメリカンフットボールの元選手たちが脳震とういよる後遺症を理由にNFLに訴訟を起こすまでになっている。また、ツインズのジョー・マウアー捕手はホーム上での激突、脳震とうにより、3度獲得した首位打者の打撃が陰をひそめ、一塁にコンバートされるなど苦悩を強いられている。

 脳は心臓と同様、人間に非常に重要な部分だ。いくら目の前の勝利がほしくても、その後の選手生命が短くなっては悲劇になってしまう。この出来事を機会に日本のスポーツ界、そしてスポーツ医学会がひとつになって、この問題に取り組んでほしいし、メディアにもしっかり「感動」ではないと宣言してほしいと思う。例えオリンピック競技でなくても、スポーツという言葉でつながっている限り、すべての選手たちの体は全員平等であるべきだろう。(椎屋)
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週刊ベースボール編集部による日替わりコラム。取材のこぼれ話も。

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