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本誌編集長コラム

スクリューボーラ―、逝く――。

 

 巨人V9時代を支えた左腕、高橋一三氏が魔球スクリューボールを覚えたのはプロ2年目のことだ。ストレートとカーブしか操れなかった高橋氏に藤田元司コーチが「シュートを投げてみろ」とひと言。当時、左腕がシュートを投じるのは邪道という考えがあったが、藤田のアドバイスを「緩急をつけろ」と解釈した高橋氏は外にひねって投げることを意識した。

 翌日、早くも本番で使うと、特に右打者に有効だった。外へ緩く逃げる変化に対応し切れずに、引っ掛けて内野ゴロの山。この魔球がスクリューボールだと認識したのは71年のこと。日米野球で来日したマーク・クエイヤー(オリオールズ)にスクリューボールの投げ方を聞いてみると、それが自らの「緩いシュート」と同じような握り方、投げ方だったそうだ。

 このようにスクリューボールに関してじっくりと1時間ほど話をうかがったのが、約10年前。V9最後の年に生まれ、高橋氏の投球を目にしたことがない私にも丁寧に自らの魔球について教えてくれた。昨年も『巨人80年史』にて倉田誠氏との対談でお世話になった。7月14日、逝去されたがその優しげな笑顔が忘れられない。合掌――。
野球の風

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週刊ベースボール編集長の編集後記。球界の動きや選手に対して編集長が思いをつづる。

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