野球漬けにもってこいだったヤクルト・ユマキャンプ
ヤクルトスワローズ監督時代、春季キャンプはずっと米国アリゾナ州ユマで行われていた。
まさにキャンプ地にはもってこいだった。宿舎、グラウンドの周辺には遊ぶところが何もない。24時間野球漬け。練習後、夕食、ミーティングが終わると、選手たちはみな室内練習場へ練習しに行った。私はヤクルトの監督を9年務めたが、ヤクルトの黄金時代はユマから始まった、と思っている。
選手たちも、初めは「野村というのは、どんな野球をするんだろう」と、ミーティングには興味津々だったはずだ。しかし、あのとき私はミーティングで野球以外の話ばかりしていた。
以前も言ったとおり、私は選手に『考え方のエキス』を注入するのが監督の仕事だと考えている。思考と行動は、切っても切り離せない関係にある。とすれば、考え方さえしっかりしていれば、行動にも間違いは起こらない。ミーティングの一番の狙いは、そこにある。選手がしっかりした考え方を持ってくれれば、チームも自然といい方向に向かうというわけだ。
監督として私が基本にしていたのは、『人を見て法を説け』という釈迦の逸話から来た言葉である。まさにそのとおりだと思った。選手たちの能力は、千差万別だ。顔が違うように、持っているものもまったく違う。同じことをみんなに言ってもダメだし、当然同じ指導をしてはいけない。ある選手にうまくいったから、こちらの選手にも同じ指導をしようとしても、同様の結果は得られないものだ。
選手個々を見て、その選手にはどんなアドバイスが適しているか見つけ、指導する。「見つける、育てる、生かす」が監督の果たすべき役割だ。中でもキャンプは新人、移籍選手をはじめ、自軍の選手をじっくり観察する良い機会である。
守備にも打撃にも適材適所がある
野球には、9つのポジションがある。そして選手たちにも、適材適所というものがある。指導者たるもの、素質を見抜き、適材適所を見つけてやらなければならない。特に高卒で入団してくる選手たちは、ゼロから見てやる。例えば・・・
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