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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「最強打者」

 

ささやきを聞いていなかった長嶋、集中力で耳に入れなかった王


 今週号の特集『史上最強のバッター』に、私は王貞治(巨人)を挙げた。

 王のすごさはどこかと聞かれれば、まず、当たり前のことを当たり前にやっているところだろう。好球必打で、失投は絶対に逃さない。王といえども、それほど難しい球を打っているわけではないのだ。要は打ち損じがない。いいバッターはみな、好球必打。二流の打者は、“好球必凡打”になってしまうところが違う。

 私は、バッティングには積極性と集中力という二大要素があると考えている。いいバッターには、好きな球を絶対見逃さない積極性がある。この積極性なくして、バッティングはできない。特に三、四、五番のクリーンアップを打つバッター。一、二番には監督命令で「待て」のサインがあるが、彼らクリーンアップに対しては監督も任せっきりになる。せいぜいサインがあっても、3ボール0ストライクから打つか見逃すか、ぐらいだろう。中心打者は、しっかりボールを狙うに尽きる。

 そして、集中力。王は、ピッチャーが振りかぶったときの集中力がまた、素晴らしかった。だから、その集中力のほんの何パーセントかでも崩そうと思って、“ささやき戦術”を使った。だが、王と長嶋(長嶋茂雄=巨人)には一切通用しなかった。長嶋なんか、まるっきり聞いちゃあいなかった。王は人がいいから、一応聞いてはいるのだが、ピッチャーが振りかぶったら、もう自分の世界。その切り替えは、大したものだ。凡人は、打席でほんのちょっと言われたことでも、とことん気になってしまうのに。

 歴代の一流バッターたちを見てきたものだから、私もすっかり目が肥えてきて、「おおっ」とうなるようなバッターには、昨今なかなか出会わなくなってしまった。ただ・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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