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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「最高の変化球」

 

天井から落ちてくる?金田さんのカーブ


 先週号の『変化球特集』に、杉下茂さん(元中日ほか)、村山実(元阪神)の話が紹介されていた。記事の筆者が書いているとおり、この2人の手の大きさは驚くほどだ。いつだったか名古屋でたまたま杉下さんと球場で会ったので、「ちょっと手を見せてください」と言って見せてもらった。あれは人間の手じゃなかった。大きさで言えば、金田正一さん(元国鉄ほか)の手も大きい。握手でもしようものなら、私の手などガブッと包まれ隠れてしまう。ただ、指の長さとなると、私の知る限りNo.1は村山だった。あれだけのフォークボールを投げるのも、うなずける。

 そのフォークボールの元祖は、杉下さんだ。ご本人に言うと、「いつも同じ真っすぐを放っていてもつまらないんで、たまたま遊びで挟んで投げたら、エライ落ちたから」と謙遜なさっていた。昔はカーブかスライダーか、つまり捻るか滑らせるかぐらいの発想しかなかった。球を挟んで真っすぐ投げるなんて、考えもしなかった。

 私の現役時代、変化球No.1といえばカネ(金田)さんのカーブだったと思う。当時は『ドロップ』と呼んでいた。名前のとおり、天井からストーンと球が落ちてくるような感覚。厳密に言えば「ボール」なのだが、バッターのアゴのあたりから落ちた球をキャッチャーがド真ん中で受けるから、球審もつい「ストライク!」とコールしてしまう。

400勝投手、金田正一のカーブは大きく、高速で曲がりながら落ちた[写真=BBM]


 球がドローンと緩やかに落ちてくれば、球審も球筋がよく見える。ところがカネさんのカーブはキュッキュッとブレーキを利かせながら高速で曲がり落ちるから、球審もつい釣られてしまう。ベンチから見ていれば、明らかに高めのボールだ。カネさんほど落差のあるカーブなら、キャッチャーミットが地面に着くぐらいのところで受けるコースがストライクだろう。ストレートとカーブのみであれだけ勝ったのだから、やはり大投手である。あんな「ドロップ」はカネさんの前にも後にも、見たことがない。

 そんなカネさんも・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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