3年ぶり、自身2度目のタイトルは、成長の証しでもある。相手バッテリーから厳重な警戒を受けながら、着実に次の塁を陥れるための“あえて”の意識。キャリアと盗塁数を重ね、今はただ速いだけにとどまらない。 取材・構成=菅原梨恵 写真=湯浅芳昭、BBM 塁に出たら「死んだふり」
今春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でも、準決勝のメキシコ戦(3月20日、日本時間21日)で激走を見せ、世界を驚愕させた。その足については、いまさら多くを語る必要はないだろう。今季は打撃面の不振で出場機会が限られる時期もありながら、シーズン36個の盗塁を決めた。もちろん、周東自身、満足はしていない。それでも、さまざまな状況下でいろいろと考えながら走った一つひとつが、今後の糧となる。 ――WBCからスタートしたシーズン。準備期間を含めて、いつもより長く感じたのではないですか。
周東 長かったのは、ありました。でも、終わったらあっという間だったなというのは毎年、思いますね。
――その中で2020年以来、3年ぶりとなる盗塁王を獲得しました。
周東 良かったなと思います。獲れるとは思っていなかったので。シーズン中盤はあとから行くこと(途中出場)が多かったですし、個数を重ねるのはちょっとしんどいのかな、と。それでも「36」走れましたからね。
――やっぱり
周東選手というと「足」のイメージが強くて、「イ
コール盗塁王」というところも。自身としても盗塁王は“獲らないといけないタイトル”という認識だったりしますか。
周東 いや、それはあんまり。勝手についてくるのかなと思っています。
――3年前に獲得したときと比べて、変化したところ、違いは?
周東 なんていうんでしょうね。いろいろと考えながら。あのときも考えてはいましたけど、とりあえず走ればいいというところもあったので。今年は長打が打てるバッターが後ろにいましたし、近さん(
近藤健介)、ギータさん(
柳田悠岐)につながるようにとかを考えながら。一塁にいても長打でかえってこられますし、無理に二塁にいる必要は……とは思ってはいました。
――そういう意識もある中で、ここは走らないといけない、ここは無理をしなくてもいい、という判断はどうやっていたのでしょうか。
周東 (一塁コーチャーの)松山さん(
松山秀明、内野守備走塁コーチ)と話しながら、どうするかは決めていました。チャンスがあるんだったら行きますし、無理に行ってアウトになる可能性が高いんだったらやめますし。相手バッテリーや試合展開など、いろいろな面を考慮して考えながら、ですね。
――過去のインタビューでも盗塁についていろいろとお聞きしましたが、今、盗塁する上で一番意識していること、大事にしていることは何ですか。
周東 今はなんだろうなー……難しいなー。(いろいろ考えた末に)“いかに雰囲気を出さないか”。
――“走る上での雰囲気”ということですか? ただ、相手バッテリーからしたら
周東選手がランナーにいる時点で脅威ですし、警戒もMAXにされている中で、走る雰囲気を出さないというのは難しいのかなと思うのですが。
周東 今季に関しては、松山さんにも「死んだふりしておけ」というふうに言われていたりして。塁に出たときに、走るときまでは雰囲気を消すように、と。
――そう言われて、自分なりに雰囲気を消すとはこういうことか、みたいな腑(ふ)に落ちた感じはありましたか。
周東 タイミングを合わせている中で、やっぱり難しいところはありましたけど。できたか、できてないかは分からないところも(苦笑)。でも、全部じゃないですけど、消すようにはしていました。
――以前は相手バッテリーの意識を自分に向けさせて、そうすることで打者との対戦に集中させないようにする、というようなことも言われていましたが、今年は違ったわけですね。
周東 (塁に出た時点で)走ると思われていますし、そこが大前提にある中で“どうしたらいいのか”。そこが今季、ポイントになっていたところだったのかもしれません。
走れるときに走る
――21年シーズンに帰塁した際にケガをして、22年シーズンはリード幅を小さくしていました。今季に関してはかなり戻ってきてリード幅も大きくなっていましたが、右肩を痛めた影響というのは、もうほとんどないのでしょうか。
周東 そうですね。もう、だいぶ痛くもならないですし、手術したところは本当に良くなっている。大丈夫かなとは思っています。
――再びケガをすることへの恐怖心みたいなものも生まれるのではないのかと思うのですが。
周東 そこは、僕自身はまたケガをしても、手術すれば治ると思っていて。こんなことを言うと・・・
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