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第42回 クライマックスシリーズは不条理か――観客動員数を確実に稼げる優良コンテンツ

 

 セ、パ両リーグのレギュラーシーズンの上位3チームで日本シリーズ進出を懸けて争うクライマックスシリーズ(CS)が、今年で8年目を迎える。優勝争いから脱落したチームによる消化ゲームをなくし、ペナントレースの終盤を盛り上げることを目的に導入。すっかり野球ファンになじんだ感もあるが、現行ルールに対する疑問の声がまったくないわけではない。

 レギュラーシーズンの1位チームが日本シリーズに出場できないケースが出ることが、懐疑的な意見の論拠となっている。2010年のパのレギュラーシーズン3位となったロッテ(1位はソフトバンク)が、CSに続いて日本シリーズも制覇。当時「史上最大の下克上」と騒がれた。また、09年の勝率.497のヤクルト、13年の同.489の広島がともにCSに出場。シーズン負け越しの成績で日本一を争う権利を持つことについては、あからさまに「両リーグのシーズンで一番のチームがぶつかる日本シリーズの意味がない。CS導入後、長年培ってきたペナントレースの価値が落ちてきた」と主張する球団関係者もいる。

 一方で、CSを歓迎している者も少なくない。本来、一発勝負であるべき戦いに“不条理”さが介在することで、ドラマが生まれるというとらえ方がある。

 本場メジャー・リーグのワイルドカードをはじめ、北米アイスホッケーなどプロスポーツのプレーオフや、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)のダブルエリミネーション方式などを引き合いに、

「敗者復活戦という発想から見れば、決しておかしなルールではない」と、CSの意義を説明。下克上のロッテではないが、「敗者や弱者と思われた者がはい上がっていく過程があればあるほど、CS、日本シリーズをより盛り上げることにつながる」という見方だ。

▲昨年、CSを制した巨人。ファンの盛り上がりも高く、欠かせないコンテンツとなっているが…[写真=小山真司]



 2年ほど前、在京のある球団がファンや関係者にアンケートを取ったことがある。「どの試合を楽しみにしているか?」という質問には、リーグ戦や交流戦、日本シリーズを上回り、CSという回答が一番多かったという。

「当たり前のように大型補強をしている球団には、他球団は年間を通じてかなわない。下位のチームが、短期接戦で知恵を絞り、倒す可能性があるのがCS」

 というのが一つの理由。一筋縄にはいかない意外性が、CSの魅力ともいえる。

 12球団の営業担当者のほとんどは、CSの実施に賛同している。「チケットの売れ方が違う。やめてもらったら困る」というのが、大方の本音。特にペナントレース終盤の3位争いをしている時期の席は“プラチナカード”だという。

「今後、日本シリーズで3位のチームまたは勝率5割以下同士の対戦や、3位のチームまたは勝率5割以下のチームの日本一が2、3年続いたら、状況は変わってくる。ルールの改定や、制度見直しの声が間違いなく出てくるはず」

 と、日本野球機構(NPB)の関係者は語る。だが、クライマックス(最高潮)状態が1度だけではなく、2度も3度もあるというのは、ファンにとって喜ばしい。観客動員数を確実に稼げる優良コンテンツとして、CSは当面続きそうだ。
日本球界の未来を考える

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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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