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第66回 揺らぐオープン戦の意義――削減、短縮で可能となる公式戦の前倒し

 

 プロ野球春季キャンプでは、実戦形式メニューの実施が年々早まってきている。2月6日には、日本ハムが沖縄・名護で12球団の先陣を切って紅白戦を実施。昨年のイースタン・リーグで高卒ルーキーのリーグ記録となる107安打を記録した2年目の岸里亮佑が「一番・中堅」で先発出場し、3回に適時打をマーク。4回には中堅への打球を好捕し、攻守で存在感を示した。

12球団の先陣を切って2月6日に紅白戦を行った日本ハム。近年は2月上旬から実戦に入るケースが増えている[写真=早浪章弘]



 第2クールが終わるころ、各球団は他球団と個別に合意して行う練習試合をスタート。11日に日本ハムと阪神(名護)、14日にDeNA(同)、19日に巨人中日(那覇)──などが組まれた。21日からオープン戦が開幕したが、その後も合間を縫って、相当数の練習試合が予定されている。

 近年、春の練習試合が目に見えて増えてきた。開幕前までに“実戦”の機会を増やしたいというのが、各球団に共通した希望だろう。同じユニフォームを着ている選手が相手のシート打撃や紅白戦よりも、より本番に近い状況は、選手にとっては緊張感とモチベーションが違う。首脳陣は戦力の見極めがよりしやすいし、若手にとっては大きなアピールの場となる。

 一方、同じような意味合いを持ちながら、オープン戦は減数傾向にある。今年のオープン戦のセ、パ両リーグの全試合数は、昨年よりも5試合少ない96試合。昨年の試合数は前年の13年よりも10試合減っている。その理由を、ある球団幹部は「オープン戦は経費面で負担が多いから」と明かす。

 オープン戦は“非公式戦”ではあるが、リーグ戦などと同等の運営が求められる。チケット作成や販売、試合日までのメディアでの告知・宣伝が不可欠だ。当日は警備やアルバイトの雇用、始球式をはじめとした試合前イベントの手配も重要な仕事で、何かと経費がかかる。雨天中止の場合は、原則的に再試合はなく、それまでの準備が水泡に帰す。開催地の地元企業などへ試合の権利を譲渡する“売り興行”の形態も多いが、球団にとってはリスクが大きい。

 それに比べると、練習試合は身軽だ。一般的に入場料をとらないため、わずらわしい権利問題などの諸準備から解放され、ほとんど経費はかからない。グラウンドのルールも公式戦に近い形でやらなければならないオープン戦とは違い、10回制など両チーム監督の合意により、グラウンドでも柔軟に実施することが可能だ。

 オープン戦の意義が薄れてきた原因として、別の球団フロントは「交流戦の影響もある」と断言する。セ、パ両リーグが真剣勝負で行う交流戦に慣れてきたファンにとって、非公式試合のオープン戦は物足りなくなってきている。“顔見せ興行”という意味合いだけでは、かつてのように集客ができなくなってきつつある。

「キャンプインから動かせる体をつくってきてもらう」──。ほとんどの監督が口をそろえるように、最近のキャンプは、体作りが主な目的ではなくなってきた。2月1日から投手はブルペンで投げ込み、野手はフルスイングをするケースも多い。かつてはキャンプ終盤から組み込んでいた実戦形式のメニューが増えてきた今、オープン戦の妥当な試合数の議論が必要だ。もし削減、短縮と判断されるなら、公式戦の前倒しも可能。現在、スケジュール的に厳しい日本代表「侍ジャパン」の秋の国際試合も編成しやすくなる。
日本球界の未来を考える

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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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