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日本球界の未来を考える

第112回 ルール変更に「野球が変わる」という多くの声

 

 今年から禁止される本塁での危険なクロスプレーに関して、日本野球機構(NPB)は1月中旬、プロ野球12球団に対して講習会を開いた。会議には各球団のコーチらユニフォーム組のトップが出席。日本に先駆けて昨年から本格的に同様のプレーを禁止しているメジャー・リーグ機構(MLB)の試合映像を見ながら、NPB審判部から具体的な内容についてのレクチャーがなされた。

 年明けに行われたプロ・アマ合同規則委員会で野球規則に明記することを承認し、それぞれの所属団体の規定により禁止の基準を設けることで合意。プロは(1)走者の体当たり禁止、(2)守備の選手のブロックや、走路をふさぐことの厳禁を決めた。つまり捕手は本塁に走り込んでくる走者に対して接触を避け、タッチのみで対応しなければならない。これまでは当たり前だったブロックという概念が、今後は排除されることになる。

 審判員がルールに反すると判断した場合、MLB同様に走者は「セーフ」となり得点が認められ、さらに「危険な衝突」とみなした場合は当該選手に警告を与える。目に余るプレーに対しては、退場処分を宣告することができる。ジャッジに万全を期すため、これまでは本塁打性の打球に限定して行っていたビデオ判定を適用することも、今回の変更のポイントだ。

 これらの変更に対し、現場では「野球が変わる」という多くの声が上がっている。ある球団のヘッドコーチは、二塁走者の本塁生還が非常に多くなると指摘。「メジャーのVTRでは、際どいタイミングのプレーはほとんどがセーフになっていた。これまでならためらっていたケースでも、今年からは『ゴー』になるだろう。ギャンブル的なプレーも多くなってくる。三塁コーチの認識を変えさせなければならない」と説明する。

 別の球団のコーチは、走者を背負ったときの外野守備のシフトの見直しが必要と強調。ルールを改定したことで逆に本塁に走り込むプレーがこれまで以上に増え、外野手の役割がより重要になってくると予想。「球場が広くなったり、外野フェンスが高くなったりしたときよりも、選手やベンチの慣れが大変になってくる」と語る。

二走の本塁突入が多くなるなど、本塁クロスプレー禁止により、確実に野球が変わる/写真=井田新輔



 どの程度が進路妨害などにあたるのか、本塁突入と同時に進行したほかの塁への走塁のプレー内容はどう判断するのかなど、不確定な部分も多い。「走者を背負った僅差の展開での配球も違ってくるから、バッテリーも無関係ではない」「交錯プレーを初めから避けようとして、士気の低下につながらなければいいが……」――など、現場の波紋は大きい。シーズンに入ってから重大なトラブルにならないためにも、キャンプやオープン戦でさまざまなパターンをシミュレーションしておきたいところだ。

 外野手の適性内容にも、少なからず影響を及ぼしそうだ。強肩はもちろんだが、新ルールに適応できる状況判断に長けた小回りの利く選手が必要。ドラフトでのスカウティングも変わってくるはずだ。本塁を守る捕手は捕球技術やインサイドワークが何よりも最重視され、体格はそれほど問われないポジションとなるだろう。これまでとは違った視点での野球の楽しみ方が、ファンにも必要となってくる。
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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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