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果たして2013シーズンの輝きは本物だったのか―。一時はチームの長年の悩みの種であった二塁の定位置を手中に収めかけ、持ち前の攻撃力でアピールに成功。しかし、好事魔多し。試合中の負傷で大きなチャンスを逃してしまう。仕切り直しの14年、背番号も36と大きく若返った中井大介の、プロキャリアを懸けた挑戦から目が離せない。

文=三浦正(スポーツライター) 写真=平山耕一、BBM

取り戻す日々

 大きく飛躍した2013年が、根拠のある自信を生む。その勢いを今季につなげ、定位置奪取に挑むプロ7年目、25歳を迎える中井大介は「ここで良い結果を残せば、波に乗っていける。信頼も勝ち取れる」と言葉に力を込めた。

 今後のプロ野球生活を考えても、14年シーズンは分岐点になる可能性を秘めた1年だ。確かな成績を残せば、その実力は本物と認められるが、しかし、その逆もあり得る。

「去年はケガをしてしまったけれど、良い数字を残せた。今年も結果を出せたら、『中井は良いじゃないか』となる。でも、つまずいたら『何だ、1年だけだったな。ダメだな』。(今年の結果次第で)良い面も、悪い面も出てくると思っています」と自覚している。

 昨季は48試合の出場ながら、打率.324、4本塁打、17打点と堂々の成績を残し、レギュラー定着まであと一歩のところまで迫った。

 能力開花のきっかけとなったのが、打撃フォームの変更だ。原辰徳監督の助言を受け、日本ハム陽岱鋼を参考に構えた際、さらにはトップの際のグリップの位置を思い切り高く上げた。

 もともと、スイングはアッパー気味。極端なくらいに上から下へ振り下ろす感覚でバットを出すと、ちょうどレベルスイングに。また、振り下ろす意識を持つことで、バットのヘッドが立ってインパクトを迎え、より打球に力を伝えることも可能となった。

 持ち前のヘッドスピードの速さが生き、力強い打球が生まれるとともに、確実性も増した。「今のスイングをすることで、結果的にボールを強くたたける形になっている」と、手応えを得ている。

 8月3日の阪神戦(東京ドーム)では虎のエース・能見篤史から決勝本塁打を放つなど、たびたびチームの勝利に貢献。前途洋々に思えたが、ここでアクシデントに襲われる。

▲昨夏の負傷後、まだ100%の状態ではなかったが、日本シリーズでは第5戦に先発出場。中前への初安打も放ち、その非凡な打撃センスを発揮した



 能見から殊勲打を放った翌日、4日の同カードで左ヒザ靱帯を損傷してしまう。守備中にダイビングキャッチを試みての不運な故障だった。そのまま戦線を離脱し、ケガの影響は想像以上に長引いた。

 日本シリーズに出場するなど一度は復帰を果たしたが、その時点の状態は100%にはほど遠く、「少しずつ良くなったと思ったら停滞期もあって、もどかしいところもあった」。思うような回復とはいかず、地道なリハビリが続いていた。

 オフは、ヒザの状態を万全にすることに集中。1月には毎年恒例の高橋由伸との沖縄合同自主トレに参加し、温暖な地でダッシュ走を繰り返すなど「8、9割のスピードで走っても問題ない」と徐々に本来の動きを取り戻していた。

 並行して「去年、良かったバッティングを完全に自分のものとしたい」と打撃練習にも多くの時間を割いた。「一番良いときに比べれば、まだ完全にしっくりは来ていない。良いときの感覚と比べながら、そのとき意識したことを思い出しながら、丁寧にやっています」

 構えた際のグリップの高さ、振り出す角度など、一球一球動きを確認しながらティー打撃を繰り返す姿がそこにはあった。時折、打撃フォームを映像におさめ、念入りに見直し、そして再びスイングをする日々を送った。

▲今キャンプから外野にも挑戦中。ほとんど経験のないポジションで、悪戦苦闘の毎日を送っている

Go for2014!〜新シーズンにかける男たち〜

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新たなシーズンに巻き返しや飛躍を誓う選手に迫ったインタビュー企画。

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