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高校通算55本塁打の実績を引っ提げ、高校生ドラフト1巡目で入団したのが2005年秋。5年後の10年には33本塁打を放って本塁打王に輝いた。統一球の導入とともに不調に苦しむ日々を送ったが、心身ともに原点回帰を図った14年、再び、輝きを取り戻そうとしている―。

取材・文=喜瀬雅則(産経新聞) 写真=佐藤真一、石井愛子

復帰戦で猛打賞

 2月19日。沖縄・宮古島には、ミストシャワーのような霧雨が、絶え間なく降り続いていた。その悪天候の中で強行された紅白戦。本塁後方に張られたネットの背後で戦況を見つめていた森脇浩司監督が、突如三塁側ベンチへと歩を進めたのは、7回一死満塁、紅組の攻撃中だった。

 打順は三番。打席に向かおうとしていた坂口智隆が、三塁側ベンチへ下がり、代わってグラウンドへ飛び出してきたのは、背番号『55』だった。五番のT−岡田が、打順を繰り上げ、打席へと向かったのだ。「そう指示してみて、慌ただしい準備の中でも、Tがどんな勝負ができるのか、見てみたかったんだ」

 紅白戦ならではの“特例采配”の狙いを、森脇監督はそう語った。紅組が4対0のリード。ここで追加点を挙げれば、試合が決まる。その瞬間における、T−岡田の心身の充実ぶりを、将は見たかったのだ。「ボール気味でしたけど、狙いは真っすぐ一本。あそこで、一発で仕留められたのは良かったですね」

 左腕・中山慎也の2球目、真ん中高めに浮いた直球を右翼へはじき返した。この2点適時打を含め、3安打3打点の大当たり。

 2月8日に左太モモを痛め、以来別メニューが続いていたT−岡田の復帰戦での猛打賞に「良かった。内容が伴っている」。いつもは辛口の指揮官が、T−岡田の変身ぶりを褒め上げた。
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