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5年ぶりの日本球界復帰。万年Bクラスに沈むチームの救世主と期待された。だが、結果はまさかの未勝利。今年4月に40歳を迎えるベテラン左腕。残された野球人生はそう長くない。並々ならぬ決意を胸に秘め、進退を懸けたシーズンに挑む。
写真=荒川ユウジ、BBM

イチからのアピール


 過去の実績も、ネームバリューも捨てた。裸一貫の意思だった。現実を受け止め、高橋尚成が静かに口を開いた。

「昔みたいに10勝とかしていれば別だけど、今はそうじゃない。ベテランだからどう、とかも言ってられない。本当にイチからアピールしなきゃいけない。こうやってまた、先発として競争させてもらえているわけだから」

 DeNAに加入し、2年目を迎える沖縄・宜野湾キャンプ。こんがりと日焼けした表情で、再出発へ決意表明していた。

 こんなはずじゃなかった─。ファン、中畑清監督ら首脳陣、何より高橋尚本人が強く思ったことだろう。メジャー・リーグから5年ぶりに日本球界復帰を決断した昨年、信じられないような不振に悩んだ。補強の目玉、先発ローテーションの柱として大きな期待を背負いながら、10試合で0勝6敗、防御率5.29。かつての雄姿は影を潜め、最大級に苦しみ続けた。

「尚成に勝ちをつけてやれなかった。あの試合、最初に勝たせてやれたら……。結果的に、俺が1人の先発投手をつぶしてしまった。監督として、本当に悪いことをしたと思っている」

 2年連続5位に沈んだシーズン終了直後、中畑監督が珍しく視線を落としてつぶやいた。

「あの試合」とは4月2日の巨人戦(横浜)。高橋尚の初登板だった。5回まで無失点に抑えながら、6回に突然の乱調。レスリー・アンダーソン村田修一ホセ・ロペスに3者連続本塁打を許すと、5対3とリードしたままスパッと降板させたシーンだ。その裏に3点を追加し、最大5点を先行していた。しかし、8回に救援陣が炎上。1イニング10失点と大逆転負けを食らった。

14年4月2日の巨人戦(横浜)。5年ぶりの日本のマウンドで5回3失点も勝ちはつかず。この日から勝利に恵まれない苦しいシーズンが始まる



 川村丈夫投手コーチも「最初の登板で白星がついていれば、まったく違う結果になったかもしれない」と述懐。スタートダッシュに失敗したことで、最後まで流れを呼び込めなかったのも事実だった。

 先発の責任投球回を持たずにKOされたのは2試合。5回2失点以内が2試合、6回3失点以内も2試合とゲームメークはした。ところが、打線の援護に恵まれず、5月29日から3カ月間の二軍生活。9月5日の広島戦(横浜)を最後に、出場選手登録を抹消された。NPBでシーズン未勝利に終わったのは自身初という屈辱。厳しく、つらく、長い1年だった。

「周りは『あの巨人戦で勝っていたら……』って言ってくれる。温かい言葉はうれしいし、ありがたいけど、それも野球人生。こういう結果を招いたのも自分自身だから」。言い訳は一切せず、成績と向き合った。4月で40歳。「より一層、集大成という気持ちが強くなる」と退路を断った。「悔いを残さずに毎日を過ごしたい。ダメならユニフォームを脱ぎます、という気持ちでやっていく」。マイナー生活が続いた一昨年のオフにも抱いた思い。引退を懸ける2015年へ準備を進めていった・・・

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