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2005年にロッテは31年ぶりの日本一に輝いたが、その時「YFK」として盤石のリリーフ陣を誇った藤田宗一氏と薮田安彦氏が「プロ野球チームをつくろう!」に登場。05年、プレーオフの死闘からの日本一や翌06年の第1回WBC制覇の話などを語っていただいた。

優勝出来るとは思っていなかったロッテで日本一を経験




――今「プロ野球チームをつくろう!」をご覧いただきましたが、お二人はゲームで遊ぶことはあるのですか?

藤田 現役時代はやっていました。野球ゲームも打ったり投げたりするものを楽しんでいました。今はやらないですけどね。

薮田 僕はゲームは何でも好きですね。ロールプレイングゲームもやりますし。現役時代は移動の時に時間つぶしにやれていいんですよ。ただ最近は球団も「プロ野球選手の身だしなみ」ということを考えるので、移動中はできないチームもありますよね。

――「野球つく」はオーナー兼監督としてチームを作成、強くしていくゲームですがいかがでしたか?

藤田 野球が好きでも打ったり投げたりするものが苦手な人もいますから、面白いと思いますよ。自分の好みのチームを作って優勝出来れば楽しいですよね。

薮田 僕はシミュレーションものも好きなので、すごくいいですよね。チームアップができるところも面白いと思います。

――お二人はロッテ時代の05年にリーグ優勝、日本一を経験しました。シーズン前は日本一は想像出来ましたか?

藤田 いや、なかったよな。

薮田 僕はありましたよ。

藤田 開幕前で?

薮田 はい。前年は0.5ゲーム差でプレーオフに行けなかったですけど、それが選手にとって自信になった感じはしました。またボビー(バレンタイン監督)の野球も楽しかった。野球ってこんなに楽しいんだと一軍にいた選手はみんな思っていたでしょうし、前年の悔しい思いをみんなが持っているのであれば、優勝まで行けるというのはありましたね。



藤田 自分はそこまでは感じていませんでした。交流戦前までチームの調子は良かったんですが、例年通り夏ぐらいには落ちるんだろうと・・・。でも交流戦を終わったぐらいから、これはもしかしたらと感じましたね。

――この年初めて開催された交流戦で優勝しましたよね。

藤田 負けなかったもんな。

薮田 負ける雰囲気がなかった。負けてもボビーがうまいこと盛り上げてくれるんですよ。それまでのロッテは、負けが込んでくると暗くなるイメージがあったんですが、ボビーはそういうことが一切なかったですね。

――薮田さんはバレンタイン監督が就任した04年からリリーフに転向し、藤田さん、薮田さん、ストッパー・小林雅英投手の3人で「YFK」の勝利の方程式が確立しました。

藤田 阪神の「JFK(ジェフ・ウィリアムス藤川球児久保田智之)」をメディアがパクリでつけちゃいました(笑)。



薮田 甲子園に行った時は怖かったですよ。「お前ら真似してんじゃねえ」とヤジられそうで(笑)。

――藤田さんは左腕、薮田さんは右腕。相手の打者の打ち方によって、登板する順番はまちまちだったのですか?

藤田 だいたい7回は自分で、8回が薮(薮田)だったですよ。たまに右打者がズラッと並んでいる時は薮が先に行くことがありましたけど。

薮田 順番は藤田さんが先と決められていたので、出て行くタイミングが分かりやすく楽でしたね。藤田さんは右打者も抑えられるので、7回の途中から行くこともなかったですから。

――リリーフはイニングの途中から登板したり、イニングをまたいで投げるのが難しいと言われますがいかがでしたか?

藤田 自分はなかったですね。

薮田 僕はピンチの場面での登板は、「抑えれば目立つ」ということがあって大丈夫でしたが、イニングまたぎがダメでしたね。一度ベンチに帰ると、緊張感が切れることがあって、リリーフの最初の頃は特に失敗しましたね。

――先発の時は当然イニングをまたぐものですが、それとは違うのですね。

藤田 ピンチの時は気持ちを集中させてマックス以上に持って行くので、そこで抑えるとやはり気が抜けるんですよ。アドレナリンが出ないような状況になっていると思います。

薮田 だいたい点を取られてました。

藤田 自分の場合、集中はするんですけど、よほどのことがない限りマックス以上の気持ちにはならなかったので、イニングをまたいでも大丈夫でしたね。でもボビーの時はほとんどイニングまたぎの采配はしなかった。マウンドでピッチングコーチが「ここだけ抑えろ」という感じで言ってくれて、これを抑えれば次のイニングはないなと分かるので、その勝負に集中出来ましたね。



薮田 でも試合によっては「次のイニングも頼む」というのもあって、それはだいたい感覚的に分かっていたので、ベンチに戻っても集中力が切れないようにしていました。



――05年は先発陣も充実していて、リリーフ陣へもスムーズにつなげられましたよね。

薮田 先発陣はすごかった。10勝以上したのが6人(渡辺俊介=15勝、小林宏之=12勝、セラフィニ=11勝、小野晋吾=10勝、清水直行=10勝、久保康友=10勝)ですよね。

藤田 本当に先発陣が崩れなかったもんな。

薮田 一人で投げ切ってくれる投手も多かったんで、ブルペンは楽だったですよね。

藤田 休めましたからね。

――136試合でリーグ最多の28完投でした。

薮田 特に俊介(渡辺)が調子良くて、彼が投げれば今日は休めるかなというぐらいの気持ちでした。

――この年はレギュラーシーズンを4.5ゲーム差の2位で通過し、プレーオフは3位の西武と対戦して2勝して勝ち上がり、1位・ソフトバンクと対戦して○○●●○の3勝2敗(当時は3勝先勝制)でリーグ優勝を決めました。

薮田 3位の西武とはレギュラーシーズンのゲーム差が大きく開いていた(18.5ゲーム差=西武は勝率5割以下)ので、正直プレッシャーは感じましたよ。でも連勝して勝ち上がった時は気持ち的に楽になりましたよね。福岡には挑戦者として行けるので。ソフトバンクの方が、僕らが西武と戦った時のようなプレッシャーをかなり感じたんじゃないでしょうか。

藤田 負けて当たり前の挑戦者で行ったので、緊張はなかった。みんな楽しそうにやってたもんな。

薮田 それでいきなりリーチをかけましたからね。

――第3戦は4対0でリードの最終回に小林雅英投手が打ち込まれ同点となり、延長10回に藤田さんが打たれてサヨナラ負けでした。(敗戦投手は小野)

藤田 決まったと思ったら、雅(小林)がやらかしてな。

薮田 そうですね。ビールかけができる雰囲気になってましたから、僕はベンチにカメラを持って入ったんですよ。でも雅が打ち込まれてカメラを置きに行きました。

藤田 僕はまだ投げてなかったので、ブルペンからベンチに行って待ってたんですけど、アレアレと思っている間に打ち込まれて、園川(一美=投手コーチ)さんに「ブルペンに来い!」と言われた。気持ちの中ではリーグ優勝が決まってましたからね。気持ちが切れていて、無理ですよと言ったんですけど……。

――2勝2敗で迎えた最終戦。先制点を取られ7回まで1対2。7回に藤田さんが登板して、8回に里崎智也選手の逆転二塁打で3対2となりました。

薮田 このプレーオフはそれまで先取点を取った方が全部負けているので、先取点を取られても勝てるという気持ちはありました。逆転した時はベンチはものすごく喜んでいるのですが、その裏は僕が投げなければならない。この試合だけは緊張していたので、僕は喜べなかったですよ。

――でも、そのプレッシャーに勝ち0点に抑え、9回も小林雅投手が無失点で切り抜け、見事にリーグ制覇、念願のビールかけとなりました。

薮田 ビールかけはテレビで見るものだと思っていました。ロッテに入団した当時もあまり強くなかったので、上位進出もあまり考えられなかったし、まさか優勝出来るとも思っていなかった。

藤田 そう、ロッテで優勝出来るとは思ってなかったもんな。でもビールかけは寒かった。

薮田 福岡はそうでもなかったですよ。(日本シリーズの)甲子園の方が寒かったですよ。ほとんどの選手がビールかけが初めてだったので、ペース配分が分からずあっという間にビールがなくなった。みんな足りない足りないと言ってましたね。でも初めてのことでそれだけ興奮してたということですね。

――その阪神との日本シリーズでは10対1、10対0、10対1、3対2と圧巻の4連勝で日本一になりました。お二人は甲子園での第3、4戦の2試合に登板しました。

藤田 2試合投げたかな? あ、第3戦は調整登板で投げたんだ。この時は負けるとは思ってませんでした。その前にソフトバンクとのキツい試合をしていたので、気分的には楽でしたね。

薮田 このシリーズはもう打線がイケイケでしたね。1戦目に大勝したので、チーム自体も乗ってしまった。雰囲気はめちゃめちゃ良かったですよね。

――ロッテは勢いがつくと止まらないイメージがありますよね。

藤田 そうですね。ちょうどゴリ(今江敏晃)、西岡(剛)の若手に勢いがあって、チームもそれに乗った感じですよね。もう3戦目に勝って、千葉に帰ることはないだろうと思っていました。

――でも甲子園は独特の雰囲気があり、やりづらかったんじゃないですか?

藤田 全然気にならなかったですね。

薮田 僕もそうですね。福岡の応援の方が強烈でした。ドームなのですごく響くんですよ。逆に甲子園は外なので音が抜けてくれるんです。プレーオフの最終戦、松中(信彦)に四球を出して、ズレータの時に暴投をして、松中が二塁に走ったんですよ。ヘッドスライディングをして二塁に到達した時、すごい歓声が上がって、球場の「揺れ」を感じました。これはビックリしましたね。



今季のロッテは投手陣がカギを握る




――日本一の翌06年、第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)のメンバーに選ばれました。

薮田 僕は日の丸を背負うことは初めてだったのでめちゃくちゃ嬉しかったですよ。日本一になった直後だったので、ロッテの選手が8人選ばれて、知っている顔も多くて居場所がないこともなかったですしね。

藤田 実は自分は最初断ったんですよ。当時は12月を体を休める時期と決めていたので。それがないとしんどくなりますからね。まあ、今となっては行って良かったなと思いますけど。でも、休みはなかったもんな。

薮田 なかったですね。ボールが違うので、まずボールに馴れることも求められましたし。

藤田 1月半ばぐらいには投げられるような体を作っておいてくれと言うことでしたからね。

――アメリカでの第2ラウンドでは1勝2敗ながら決勝ラウンドに進出。準決勝ではそれまで2敗していた韓国に勝ち、決勝もキューバを撃破して優勝しました。

藤田 アメリカで1勝2敗になった時はみんな帰る用意してたもんな。

薮田 アメリカがメキシコに負けるとは思っていなかったので、そうでしたね。決勝ラウンドの行われるサンディエゴには移動していましたが。

――準決勝の韓国戦は気合いが入ったんじゃないですか?

薮田 気合いは入ってましたね。よく覚えているのが、日本国内ですごく盛り上がっているということを全然知らなかったんですよ。

藤田 帰ってきてから分かった。

薮田 韓国に勝った次の日、記者の方からものすごい視聴率だったと聞きましたから。

――半年間でリーグ優勝、日本一、WBC制覇とすごかったですね。

藤田 そうですね。05〜06年は熱かったですね。

――最後に今シーズンのロッテはいかがでしょうか?

薮田 昨年を見るとやはり先発陣が苦しんでいましたよね。今年は成瀬(善久)が抜けて、それに代わる補強もあまりしていないので、どれだけレベルアップするかでしょうか。2年目の石川(歩)、ルーキーの田中英祐(京大)がどれぐらい活躍出来るかですかね。それから里崎が抜けた捕手もポイントです。昨年の時点では、里崎と他の捕手の差がまだありました。今年は誰をメインにして戦うかというところがカギになると思います。やはり強いチームは捕手を固定していますので。

藤田 捕手が頻繁に代わるとピッチャーが困るんですよね。ロッテが強い時はピッチャーが良かったので、そこがカギでしょうね。また昨年はリリーフ陣の波が激しい感じがしました。そこをしっかりすればチャンスはあるのかなと思います。

薮田 昨年、里崎が引退した時に言ってましたが、ロッテは5年に一度のペースで日本一になっていて、ちょうど今年はその年になるので、ファンの方も注目していますし、ぜひ優勝してもらいたいですね。05年、10年と日本一になりましたが、いずれもレギュラーシーズンでのトップではなかったので、そこを目指して頑張ってほしいですね。



PROFILE
藤田宗一ふじた・そういち◎1972年10月17日、京都府八幡町生まれ。島原中央高から西濃運輸を経て98年にドラフト3位でロッテに入団。初年度からリリーフとして活躍し、5年連続で50登板以上をマーク。00年には70試合に登板し19ホールドで最多ホールドのタイトルを獲得。日本一となった05年にも24ホールドを挙げた。08年に巨人、11年にソフトバンクに移籍。12年はBCリーグの群馬でプレーし引退。通算成績は、600試合、19勝21敗8セーブ、77ホールド、366奪三振、防御率3.89。

PROFILE
薮田安彦やぶた・やすひこ◎1973年6月19日、大阪府岸和田市生まれ。上宮高から新日鉄広畑を経て96年ドラフト2位でロッテに入団。入団し8年間は主に先発で起用されたが、04年にリリーフに転向。05年には7勝19ホールドを挙げ優勝に貢献。07年には34ホールドでタイトルを獲得し、翌08年にはロイヤルズに移籍。2年間で43試合に登板した。10年にはロッテに復帰し日本一に貢献。11〜12年はストッパーを務めた。13年限りで引退。通算成績は、520試合、48勝72敗67セーブ、112ホールド、710奪三振、防御率3.81。

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