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オリックス・高橋慶彦一軍打撃コーチ「どれだけ選手に好きになってもらえるかが大事」

 

結果がすべてだから


原因を突き詰めることに力を注ぎ、そして改善へと導く。独自の打撃理論に基づき、指導にあたるが、答えは“形”ではなく、あくまで“結果”。好成績へと導いていくことこそが、コーチの仕事だと自負している。

選手に歩み寄り、対話を大切にしている。すべては選手が“結果“を出せるようにするためだ/写真=佐藤真一



 練習法は常に考えています。実際に自分が行ってきたメニューを基にしたり、先輩指導者の方に話を聞いて、そこでヒントを得ることもあります。下半身の使い方を覚えさせるために、糸井にサッカーボールを打たせましたが、そうやって多くの練習法を試行錯誤しています。

 そうした多くの練習法を用いながら指導していきますが、当然、指導されたことを理解するのが早い選手もいれば、遅い選手もいます。理解が早い選手は、やはり上達も早く、結果を出してレギュラーになるのも早いでしょう。だからと言って、理解が遅い選手を放っておくことはしません。理解ができるまで続けて指導するだけ。根気よく最後まで。

 もちろん、そうやってしっかり理解をさせ、体の使い方がうまくなっても結果が出ないときもあります。そのときは本当につらい。何が悪いのか、どうしてなのか。その場合は、選手と会話を交わしながら、タイミングの取り方やメンタル的な部分も含めて考えていきます。

 ただ、問題点や改善点も含めて、“体の使い方”は、あくまで持論にしか過ぎません。ほかの人は、違う考えかもしれない。だから、正解は“結果”が出たほうなんです。この教え方が良かったと思えるのは、結果が出たとき。そして選手が一番うまくなるのも結果が出たときなんです。プロの世界は結果がすべてですから。

 その結果までの過程が、僕は体の使い方だと思う。そして、体の使い方を覚えてもらうために、先ほど言ったように、どれだけ選手に好きになってもらうかが大事になる、ということです。すべては結果に結びつけるまでの“過程”なんですよ。結果が出なければ、その“過程”を繰り返していく。その連続です。

 そもそも良いコーチというのは、選手が決めることだから、私が決めることではないのですが、結果を出してあげるのがコーチの仕事であることは間違いありません。そして、あくまで選手あってのコーチということは忘れてはいけない。プレーしているのは選手なのですから。チームの主役は選手。コーチは選手がうまく機能するための歯車なのです。

 指導で気をつけていることが、もう1つあります。それは複数のコーチが、同じ選手に対して違う指導をしないことです。別の指導を同時に行うと選手は混乱してしまう。選手の取り合いをしないように、コーチ間のコミュニケーションは大事にしています。だから今も、北川(博敏打撃コーチ)とは、情報共有を欠かしていません。あの選手は、ここが改善点だから、こういう指導をした、というようにコーチ間でしっかりコミュニケーションを取りながら、選手の問題点と改善点を探す毎日です。いつも、悩み考えています。

 そして最終的に指揮を執るのは監督です。選手がプレーし、結果が出ないときは、コーチが指導し、その上で監督が起用法を考える。コーチ、監督と、チームがうまく回るようにするための潤滑油になるだけ。そのためにも選手はもちろん、コーチ間や監督との対話は欠かせない。人と人だから大事なのは、やはりコミュニケーション。そこから、指導が始まり、選手が成長し、チームが強くなっていく。理論や練習法の以前に指導の根底は対話。その“対話”という幹から枝葉が出て“結果”という花を咲かせてあげることが、指導だと私は思っています。

PROFILE
たかはし・よしひこ●1957年3月13日生まれ。東京都出身。城西高から75年ドラフト3位で投手として広島に入団。入団後に野手に転向すると78年にレギュラーに定着し、79年に日本記録の33試合連続安打をマーク、同年の日本シリーズMVPにも輝くなど、一番打者として赤ヘル黄金期を支えた。90年にロッテ、91年に阪神へ移籍し、92年限りで現役引退。現役通算成績は1722試合、1826安打、打率.280、163本塁打、607打点。引退後の95年から2年間、ダイエーで一軍打撃・走塁コーチを務め、村松有人浜名千広らの若手を育成。2005年にはロッテの一軍走塁コーチとして、西岡剛を育て上げ、10年からは二軍監督、12年は一軍ヘッドコーチに。今季からオリックスの一軍打撃コーチに就任し、糸井嘉男にマンツーマン指導を行うなど、その手腕が注目されている。
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