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シリーズ 首脳陣に聞く

【首脳陣に聞く】西武・青木智史(育成コーチ兼人財開発チーフ)「主体的な行動力、言語化能力。この2つを高めることが一軍で活躍するために大事です」

 

監督、コーチら指導者たちに聞く短期のシリーズ・インタビュー第2回は西武・青木智史育成コーチの登場だ。同コーチは人財開発チーフも兼任しているが、果たして“人財開発”とはどのようなことを行っているのか。チームは新たな育成環境の構築に取り組んでいるが、その肝となる役割について語ってもらった。
取材=平尾類 写真=梅原沙織

打撃の指導も担当。選手に寄り添いながらレベルアップの手助けをする


グラウンド上での姿勢や考え方をサポート


 FAで主力選手が他球団に流出しても、生え抜きの若手が次々と頭角を現し、一軍の舞台で活躍する――。西武の強さの源は「育成力」だ。松井稼頭央監督就任1年目の昨年は5位に終わったが、隅田知一郎が9勝をマークし、野手陣も古賀悠斗渡部健人蛭間拓哉を筆頭に若手たちが存在感を見せた。育成枠からシーズン途中に支配下昇格した豆田泰志が救援で夏場以降、一軍定着したように、新戦力の台頭はチーム力の底上げにつながっている。青木智史ファーム育成コーチ兼人財開発チーフに、選手育成に携わる熱い思いを語ってもらった。

 人財開発担当は2021年に新設されました。選手の技術指導以外のグラウンド上での姿勢、取り組み方、考え方をサポートするのが具体的な役割です。普段から選手一人ひとりの様子を観察し、対話して個々の選手の思考を把握した上で、声掛けすることを心掛けています。基本的に練習中はグラウンドにいて、試合中の動きも確認します。技術的な指導、フィードバックは各部門の担当コーチがするので、人財開発担当は選手たちがなぜそういう考えに至り行動をするのかをひも解き、「明日はこういう行動をしてみようか」などコミュニケーションを取ります。

 野球の技術を高めるのは当然ですが、新人から3年目にかけての選手たちに身に付けてもらいたいスキルが、主体的な行動力、言語化能力です。この2つを高めることが一軍で活躍するために大事になってきます。言語化することで自分の思考が整理され、意志を明確に伝えられる。周りの人たちも考えを理解して的確な情報を与えやすい。行動、言語で明確にアウトプットできる選手は成長が速いんです。

 いろいろ考えている選手でも、ため込んでいてぼんやりしているケースがあります。そのときは言葉にして吐き出すことで思考が整理される。まとまりのない話でも「ああ、そういうことですね」と自分自身で気づいて。高卒3年目の菅井信也はその代表例です。口数が多くないと前任の面談担当から聞いていましたが、本人の中で(内面を)変えようと感じたのでしょう。昨年は面談を重ねるたびに言語量が多くなり、継続する部分、新しいアクションを起こす部分、切り捨てなきゃいけない部分を自分で判断できるようになりました。自己理解ができていたからこそ、ファームで年間を通して安定した成績を残せたと思います。今年は育成枠から支配下昇格を目指し、さらなる成長が楽しみです。

ギャップを理解すれば成長につながっていく


 西武は人財開発の一環として外部講師の坂田賢二氏を招き、1、2年目の選手を対象に年に数回の獅考(思考)トレーニングを22年から実施している。選手たちはワークシートに自身の行動を書き込み振り返ることで自己理解し、思考の癖であるバイアスを解きほぐす。行動の成功パターンと失敗パターンを見つめ直し、最後は自己成長分析をスピーチする場が設けられるという。

 自分しか持っていない考えが、本当の答えとは限りません。その「思考の癖」を解きほぐすことが難しい。今までやってきた考え方や行動が正しかったから、プロの世界に入団できたことは間違いありません。ただ、プロの中でさらに活躍して一流選手になるという目標を目指すとき、今までやってきた方法がそのままプロでも通用するとは限りません。

 例えば高校野球で甲子園優勝を達成した高卒のルーキーがいたら・・・

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