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野球浪漫2014

福山博之[楽天・投手]

 

 歌手の北島三郎に似ているその風貌から“サブちゃん”の愛称でファンにも愛され、いまや欠かせない中継ぎに成長した福山博之
だが、現在の活躍までにはプロ入りしてわずか2年で投手失格のらく印を押されるなど、紆余曲折の苦難の日々があった。天国と地獄を味わった激動の野球人生を振り返る。




 初めて手にするウイニングボール。4月6日のソフトバンク戦(コボスタ宮城)でプロ初勝利を飾った福山博之の表情に、万感の思いはなかった。「初勝利に興味はないです。先発の思いを受け継いで、抑えにつなぐのが僕の仕事なので」

 笑顔も控えめにそう語った右腕はいま、楽天の勝利に欠かせない存在となった。

 2つの思いが芽生えた。2013年7月26日、Kスタ宮城でのロッテ戦。1点ビハインドで9回裏のマウンドへ。開幕13連勝と突っ走っていた田中将大が初黒星の危機を迎えていた。だが、味方打線が奮起して押し出し四球で同点とした一死満塁で嶋基宏が中前に意地のサヨナラ打。相手・守護神の益田直也を打ち崩した。福山は鳥肌が立った。そして、その瞬間にこう思ったという。

「このチームはすごいな。このチームに来て、本当に良かった」

 この後、田中は1敗することもなく、24勝1セーブの成績を残し、チームも優勝。振り返ればその1勝が1年のターニングポイントだったという声は多い。福山は同時にこんな思いも抱いた。

「グラウンドに出て、みんなとハイタッチができたら、なおさらうれしいんだろうな。ああいうシビれる展開で」

 通常、中継ぎ投手は登板しなくても準備のためにブルペンに入る。登板すれば勝利した場合はグラウンド上で首脳陣や選手とタッチを交わして終わるが、投げずに終わったリリーフ陣はベンチの中で出迎えることになる。当時、福山は敗戦処理要員だった。帰宅して夫人にそれを伝えると、こう返ってきたという。

「じゃあ、あなたはまず・・・

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