昨年はプロ入り5年間で最少となる38試合出場にとどまった。今春キャンプもB班スタートと苦境に陥ったが、その目は死んでいなかった。ユーティリティープレーヤーとして、チームになくてはならない選手に──。見事、開幕一軍スタートを決めたが再び二軍へ。しかし、熊代聖人の闘志は燃え続けている。 文=上岡真里江、写真=BBM 野球観が変わった新人年以来のB班スタート
『物は考えよう』とは、よく言ったものだ。一見、悲観してしまいそうな物事も、とらえ方を変えたことで自己変革の大きなターニングポイントになることもある。熊代聖人にとって、2016年春季キャンプは、まさにそれだ。今年こそ右翼に定位置を確保すべく、愛媛での自主トレを順調にこなし、1週間後に始まる2月1日のキャンプインへ向け、心身とも万全の調整を続けていた。そこへ、球団からの発表が届いた。B班(二軍)キャンプスタート──。
「正直、『何で?』と思いました」 当然の感情だろう。入団2年目から、常に2月1日は宮崎・南郷で迎えてきた。それが、新人年以来、5年ぶりの高知・春野でのB班スタートを通達されたのである。知った瞬間のショックは、さすがに隠せなかった。周囲からも、「何でクマがB班なんだよな?」「絶対おかしいよ!」など疑問の声も挙がった。
今までであれば、そんな声に同調し、「ふて腐れていたはず」と自ら認める。だが、このときは違った。「何で?」と一瞬ショックを受けた直後、胸に去来したのは「この現実をしっかり受け入れんと、本当に終わる」という危機感だった。そして、冷静に分析した。
「ライトのレギュラー争いの相手に坂田(遼)さん、木村(文紀)さんがいて、じゃあ自分は今どの位置にいるんだろう?と考えたときに、まず打撃力で3〜4番目ぐらいの位置付けになったんです。ならば、B班スタートでもしょうがないですし、それを打破するためには、もう本当にやるしかないと、心から真摯に受け止めることができました」 ひとたび現実を受け入れると、驚くほどすべてがポジティブな方向へと変わっていった・・・
この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。
まずは体験!登録後7日間無料
登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。
登録済みの方はこちらからログイン