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野球浪漫2022

広島・中村奨成 ロマンより現実を求めて 「どんな形でもいいから、試合に出たい」

 

今夏も甲子園で熱戦が繰り広げられる。2017年夏に甲子園を沸かせた一人の高校球児は、今、5年目を迎えたプロの世界であのときと変わらない必死さを見せている。技術向上のため、地道に、コツコツと──。
文=坂上俊次(中国放送アナウンサー) 写真=牛島寿人、BBM


華やかさはいらない


 あの夏から5年がたった。

 甲子園で1大会最多の6本塁打を放った中村奨成は、ユニフォームを真っ黒にして、もがいている。バッティングの安定感、捕手としてのレベルアップ。さらに、今シーズンは外野手としての出場にも活路を見いだしている。

 あの夏の映像を見返すことはない。

 甲子園の砂も持ち帰ってはいない。

 ホームランボールは、実家に送った。

 当時の自分を、彼は、他人事のように振り返る。

「大舞台で、ああいうのが好きで、いつも以上の力が出せたのかもしれません。勝つしかなかった。勝ちたかった。そういう状況で、いつも以上の力が発揮できたのかなと思っています」

 口癖は「大丈夫っす」

 どんなときもポジティブなスター候補生は23歳になった。身体能力に裏付けられた「華やかさ」はエピソードに事欠かない。

 バレーボールVリーグの始球式に登場すると、鮮やかなジャンプサーブを決めて見せた。ドラフト当日には、体育のバスケットボールの授業で同点スリーポイントシュートも決めている。

 ある体育教諭の話が忘れられない。

「運動神経と言いますか、ボールに対する感覚が素晴らしいです。6カ月もしっかりやれば、バスケットボール部でユニフォームが着られるくらいだと思います」

 一方で、彼自身は「華やかさ」や「逸話」を追い求めてはいない。野球に対しては、その逆であるようにも感じる。

「いつも以上のプレーは必要ありません。むしろ、いつものプレーの水準を上げていきたいです」

 50メートル走5秒9の俊足に、181センチのスラリとしたスタイルである。もちろん、長打力も超高校級だった。しかし・・・

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