週刊ベースボールONLINE

野球浪漫2022

巨人・増田陸 ギラギラとした魂 「3年間、全然結果も出てなくて育成になった。今年ダメだったらここから先、僕の人生ダメになる──」

 

大きな期待を受けながら入団したものの、3年間一軍の舞台に立てぬまま、昨オフに育成落ち。高卒4年目にして迎えた「野球人生を懸けた一年」。自らの手で人生を変えて見せた。それでも見据える先はまだまだ、はるかな高みだ。
文=北川修斗(スポーツライター) 写真=高原由佳、BBM


キャプテンの言葉


 今季の巨人の若手野手で、一番の存在感を見せていた。5月にプロ初安打と初本塁打を記録すると、勝負強い打撃で一気に一軍に定着。将来性豊かな高卒4年目。増田陸はそれでも、1月には悲壮感すら漂わせるほどの、強い覚悟と危機感を口にしていた。

「髪の毛をいじくっている場合ではない。邪魔なものは消し去る。1月1日に、今年に掛ける思いを髪の毛で示すために、自分でバリカンでやりました」

 自主トレ公開日。五厘刈りの丸刈り頭でリモート画面に登場し、報道陣を驚かせた。口だけでなく、行動で示す。

「3年間、全然結果も出てなくて育成になった。今年ダメだったらここから先、僕の人生ダメになるなと。何か変えないと、ここで変えないとダメだなと思った」

 そんな覚悟の表れだった。

 明秀日立高時代は、光星学院高(現・八戸学院光星高)で坂本勇人を指導した金沢成奉監督の下で頭角を現し、高校通算34本塁打。強打の内野手として2019年にドラフト2位で巨人に入団した。坂本の後継者として、背番号も坂本がかつて背負っていた「61」。高い期待を受けていたが、プロの壁にぶつかった。

 プロ1年目に、入団前から不安を抱えていた左手首を手術。二軍でも試合の出場はなかった。2年目は二軍で48試合、3年目も二軍で50試合のみの出場。3年間で一度も一軍に呼ばれることはなく、21年オフに育成選手契約となった。「1年1年全力でやっていたので、『もっと練習しといたらよかったな』とかは思わなかった。それに結果がついてこなかっただけ」。練習しているという自負があったからこそ、悔しかった。

 尊敬してやまない坂本の言葉に奮い立った。今年1月。弟子入りして3年目となる沖縄での自主トレを、川崎市のジャイアンツ球場で行われる育成選手の合同練習に参加するため、一足先に上がった。

 すると坂本からLINEが送られてきた・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

野球浪漫

野球浪漫

苦悩しながらもプロ野球選手としてファンの期待に応え、ひたむきにプレーする選手に焦点を当てた読み物。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング