即戦力と期待されプロの門をたたいたが、これまで何度もケガに苦しめられ、満足のいくパフォーマンスができなかった。しかし、勝負の1年となる2023シーズン、コンディションが整い、本来の姿を取り戻しつつある。まだまだ29歳、ここからまばゆい光を放っていく。 文=菊田康彦(スポーツライター) 写真=桜井ひとし、BBM 戻ってきたストレート
躍動感みなぎるフォームから投げ込まれたボールが、糸を引くように捕手のミットに吸い込まれる。最速154キロのストレートは打ってもファウルにしかならず、140キロ台のフォークにはバットが空を切る──。
3月17日の
阪神とのオープン戦(神宮)。今年初めて一軍マウンドに上がり、3者三振に斬って取ったこの日のピッチングこそが、星知弥の“復活”ののろしとなった。
「状態的には良かったんですけど、ちょっと(ファームで)実戦が少なかったところがあったので、そこが心配ではあったんです。ただ、自分の投げているボールに関して言えば、昨年までとはちょっと違うというか、自分でも感覚は良いのかなと思ってました」 星自身そう振り返るように、キャンプ前の自主トレから感じていた状態の良さを、そのまま出せたような一軍初登板だった。オープン戦ではこの試合を含め、3度の登板で計3イニングを投げて一人の走者も出さず、6つの三振を奪う完璧なピッチング。ルーキーイヤー以来6年ぶりに開幕一軍メンバーに抜てきされると、公式戦でも7試合無失点を続けた。
「体の不安がなくやれているのが一番大きいと思います。これまでコンディション万全で投げられたシーズンは正直、なかったんで……」 明大からドラフト2位で入団して、今年で7年目。思えば、これまでは故障との闘いに明け暮れたプロ野球人生だった。
栃木県那須郡那珂川町で生まれ、
「父も祖父も野球が好きで家でよく見ていましたし、『野球って面白いな。やってみたいな』って思ってました」という星が野球を始めたのは、小学4年生のとき。中学の軟式を経て、地元・宇都宮工高で初めて硬式でプレーすると、150キロのストレートでプロからも注目された。
「おそらく甲子園に出ていたら(プロ)志望届を出していたと思います。甲子園に出られなかったんで、大学でやろうと思いました」 進学した明大では1年春からリーグ戦で登板するも・・・
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