強力リリーバー陣の中で埋もれることはない。堂々の防御率0.00(5月25日現在)。勝っている場面、負けている場面、点を与えることなくイニングを終わらせる。それがチームの勝利に導くと知っているから。だが、この境地にたどり着くまでには紆余曲折があった。だからこそ、今、さらに上を目指そうという気持ちが芽生えている。 文=新里公章(サンケイスポーツ) 写真=宮原和也、BBM いまこそ“復肩”のとき
セ・リーグ屈指の安定感を誇る虎のブルペン陣にこの男のタフネスが加わると、長丁場のシーズンを戦う上で頼もしい存在になることは間違いない。2020年オフに
ソフトバンクを戦力外となり、その後、阪神に入団した加治屋蓮が“復肩”のときを迎えようとしている。
縦縞に袖を通し、着実に出場機会を増やしてきた右腕が、阪神で今季から2度目の指揮を執ることとなった
岡田彰布監督率いる、若きタイガースのスタートダッシュを支えてきた。
「監督が代わったこともそうですし、また新しい自分を見せられる、ポジションを奪いにいけるチャンス。(シーズン前から)抑えは湯浅(湯浅京己)と言われていましたけど、その前の役割は、ほとんど決まっていない状態でキャンプがスタートしました。ポジションを奪いにいけるという思いは、岡田監督が就任されて、中継ぎはみんな、年齢が上でも下でも、二軍の選手も含めて、“よし、俺が”という気持ちになっていると思うんです」 ハイレベルな競争に身を置く中で勝利に貢献している充実感は、結果にも表れた。今季はシーズン開幕を一軍で迎え、4月1日の
DeNA戦(京セラドーム)で、同点の延長11回の場面で初登板。緊迫した場面を1回1安打無失点で切り抜けると、チームのサヨナラ勝利につながった。
4月はこの一戦を含め、8試合に登板して7回1/3を投げ、防御率0.00、1ホールドと安定感を数字で示す。5月も順調に登板数を増やし、9試合で同0.00を記録し、3ホールドを記録。連続無失点試合は「17」に伸ばした(5月25日時点)。さらに、14日のDeNA戦(甲子園)は3球、16日の
中日戦(豊橋)は2球、そして21日の
広島戦(甲子園)はたった1球で打者を料理し、“必殺仕事人”ぶりも際立ってきた。
チームの信頼を勝ち取った要因は、昨オフから取り組む新フォームの成果も大きい。昨年11、12月の自主トレ期間に動作を見つめ直し、左足を上げる高さを低くした。目に見える違いだけではない。投球動作中の思考にも、変化を加えた。
「体の外で上げるというより、体の中で上げるという意識をしながら、足を上げていきます。骨盤が傾けば、足が勝手に地面から浮くのと一緒。この感覚で足を上げています。末端に意識をいかせずに、体の中心で上げていくイメージです」 左脇腹の“中身”が左足を上下動させてくれる感覚がある。そこを使うことにより・・・
この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。
まずは体験!登録後7日間無料
登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。
登録済みの方はこちらからログイン