ブルペンに厚みを持たせる変則左腕にして、プロ入りから6年連続で40試合以上に登板する鉄腕。さらに今季は、若手が台頭してきたチームの投手陣にあって、リーダーとしての自覚も芽生えてきた。今や、チームになくてはならない存在だ。 文=北川修斗(スポーツライター) 写真=佐藤真一、高塩隆 新たな役割
巨人投手陣の仕事人――。高梨雄平は左の切り札として、ワンポイントから回またぎまで何でもこなし、これまでに何度もチームの窮地を救ってきた。
2020年途中に
楽天からトレードで巨人に加入した変則左腕は、新型コロナ禍で120試合に短縮された同年からいきなりチーム2位の44試合に登板。昨季はチームトップの59試合で腕を振った。どんな場面でも表情を変えず、淡々としたマウンドさばきを見せる男に、気づけば新たな役割が加わっていた。
「気持ち的には若手と中堅の間ぐらいの感じでいたんですけど、年齢で分けてみると、気づけばベテランのほうにいた。ふとしたときに(巨人の投手陣は)若いなって。投手単位で、もうちょっと(全体を)見なきゃいけないと思った。空気づくりとか、ジャイアンツのピッチャーのことを考えるようになりました」 31歳を迎える今季、チームの投手陣では上から5番目の年長者となった。
20年の移籍直後には球団公式YouTubeで『何してんの!? 高梨雄平、衝撃のトレーニング!』という動画が公開されるなど、独特なストレッチやトレーニング、豊富な知識量で知られる。これまでは「我が道を行く」という表現が合うような、まさに「職人」だった。若手へのアドバイスは、聞かれたら答えるという程度。
「(自分からは)干渉しないスタイル。僕から学ぶことがあるなら聞いてという感じだった」と言う。
だが、昨季はプロ野球史上初となる同一シーズンで8人がプロ初勝利をマークするなど、一気に若返りが進むチームにおいて、自分の立ち位置を急激に意識するようになった。今までのスタイルを見返して、
「めっちゃ意識した。果たしてそれでいいのだろうかって」。
昨年のシーズンオフには
「接し方とか、自分の野球以外のところで試行錯誤することって今まであんまりなかったので、新鮮だった」と振り返っていた。
3月31日、東京ドームでの
中日との開幕戦。ベンチ入りした投手陣の中では、
鍵谷陽平に次いで上から2番目の年齢だった。そんな中で
「パフォーマンスを出しやすい環境をつくることにまず、最初は集中しようと。みんなで同じ方向を見るように」と考えた。
シーズンが進むにつれ、中継ぎ左腕がベンチ入りの投手陣で最年長となる試合も多くなっていった。そこで
「積極的にイジられるようにした」と笑う。自分から積極的に若手たちとコミュニケーションをとり、野球以外の部分も自分からさらけ出していった。
「イジってもらうことによって若手をひとつにする作戦が今のところハマっている」。守護神の
大勢をはじめ、
菊地大稀が2年目、
田中千晴はルーキーといった若手投手たちを巻き込んだ和やかな雰囲気。それは・・・
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