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野球浪漫2023

阪神・渡邉諒 捲土重来を期す「『(阪神に)来てくれてありがとう』と言ってくれた人たちのためにも、もっともっと期待に応えなくちゃいけない」

 

右の代打として、時に三塁の代役として阪神移籍後は、チームに貢献してきた。だが現在はもがき苦しみ、再調整のため二軍へ。後半戦の終盤の来るべき時に向けバットを振り込んでいる。望んで獲得してくれた岡田彰布監督の期待に応え、ファンの大声援に後押しされ「アレ」に貢献してみせる。
文=間宮涼(デイリースポーツ) 写真=桜井ひとし、BBM

阪神・渡邉諒


直球破壊王子


 まばゆいフラッシュを浴びる。人見知りな性格の渡邉諒は、はにかみながら大歓声に応えた。移籍後初安打となる今季1号を放った4月13日の巨人戦で受けた初めてのヒーローインタビュー。敵地・東京ドームの左翼席から届いた虎党の声が、再びはい上がるための糧だ。「阪神に来てくれて、ありがとう」――。

 今年28歳。チームでは年下選手が大半だが、私生活では男3兄弟の末っ子だ。長男の影響で小学1年生から野球を始めると、土浦三中では硬式野球チーム「竜ケ崎シニア」に所属し、3年春に全国選抜大会に出場。その傍ら、学校の陸上部に所属して短距離選手としても活躍した。茨城県大会では100メートル走で2位となる11秒4を記録し、関東大会に出場した経験もある。プロ入り後は故障の影響もあり「今は全然速くない」と苦笑いするが、「運動は何でも人よりできた」と抜群の身体能力を自負する。

 ただ、「野球が一番ヘタかも……」とポツリ。いわゆるスター選手だった高校時代を知る人ならば、現状のもどかしさは想像にたやすいかもしれない。

 現中日高橋周平にあこがれて入学した東海大甲府高では、入学直後から脚光を浴びた。1年春からベンチ入りすると、5月の関東大会初戦・八王子高戦。高橋を視察するために全12球団のスカウトが球場へ駆けつけた中、左翼席に120メートル弾をたたき込んで衝撃を与えた。同年夏の県大会からは高橋を抑えて四番に抜てきされ、レギュラーの座に。2年夏には甲子園出場を果たしてベスト4へ進出した。主将を務めた3年時は聖地切符をつかむことはできなかったものの、高校日本代表にメンバー入り。日の丸を背負って出場したU-18ワールドカップのキューバ戦で高校通算39本塁打目をマークするなど、高校生野手屈指の大型遊撃手として実力は折り紙付きだった。

 だが、プロ選手としてのスタートは順風満帆とは言えなかった。ドラフトでは、松井裕樹(現楽天)、柿田裕太(元DeNA)、現在チームメートの岩貞祐太をくじで外した日本ハムから、ようやく指名を受けた“外れ外れ外れ1位”。ルーキーイヤーには足首を骨折するなど故障にも悩まされた。

「焦りはもちろん、ありました」

 ともに日本代表でプレーした森友哉(現オリックス)、上林誠知(現ソフトバンク)ら高卒でプロ入りした同学年の選手の活躍は、嫌でも目に入ってきた。

「高校の侍ジャパンで一緒にやっていた選手は半分以上がプロに入っていたので、すごく意識していました。僕も早く活躍しなきゃいけないなと」

 はやる気持ちを抑えつつ、体のケアやトレーニング方法を身につけるなど自分と向き合った。

 ターニングポイントだと語るのはプロ6年目となる2019年だ。ようやくシーズンを戦い抜く体が出来上がってきたころ・・・

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苦悩しながらもプロ野球選手としてファンの期待に応え、ひたむきにプレーする選手に焦点を当てた読み物。

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