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野球浪漫2023

中日・福敬登 未来を信じて「プロ野球選手でいられることをありがたいと思って、日々に感謝しながら、一日一日をかみしていきたい」

 

昨年の9月に突然、左足のしびれに襲われた。診断の結果は「黄色靭帯骨化症」。手術を選択したが、最悪の可能性も考えられた。予想を大きく上回るスピード復帰は今年の5月。今はただ、野球ができる喜びを全身で感じている。
文=川本光憲(中日スポーツ) 写真=宮原和也、井田新輔、BBM

中日・福敬登


不思議な違和感


 福敬登にとっての2023年は、昨年10月にメスを入れた国指定の難病・黄色靱帯骨化症の手術明けのシーズンだった。20年に最優秀中継ぎのタイトルを手にした左腕。復帰シーズンは29試合に登板して1勝、12ホールド、防御率2.55。セットアッパーとしてあらためて存在感を示した。

 福が表現する体の違和感は、どのようなものなのか。少し考えて、次のように例えた。

「皆さんも感じたことのあるしびれ、あるじゃないですか。長時間あぐらをかいたり、正座したりしたあとです。たたいても何も感じない、痛くない、という状態に感じるやつです。手術してからは、朝起きて、どんな状態か確かめるところからスタートします」

 違和感を覚え始めたのは、昨年9月のことだった。

「左足がしびれました。原因も分からなくて……。うまく力が入らない感じがしてはいたんです」

 ダメ押しとなったのは、昨年9月17日のヤクルト戦(バンテリン)。延長12回表、二死走者なしからの登板。先頭・村上宗隆に二塁打を打たれた。と同時に左足の感覚が消えてしまったと言う。

「足がない感じで、自分でもどうやって投げたのか覚えていないんです」

 連続四球で二死満塁。代打・川端慎吾に勝ち越し打を打たれて降板。立浪和義監督に正直に症状を告白して、出場選手登録抹消となった。

 なぜ、しびれるのか。経験がないから理由を探ろうとする。でも分からない。病院で診断を告げられた。黄色靱帯骨化症。耳を疑うよりも、病名が分かって少し楽になった。歩いていた真っ暗闇。出口があるとはっきりした分だけ、ホッとした部分もあった。

 未来を信じる第一歩は執刀医選びから。DeNA三嶋一輝が胸椎黄色靱帯骨化症で手術を受けたことは知っていた。チームメートの協力で同じ病を患った大隣憲司(元ソフトバンクほか)らに連絡をとり、経験談を尋ねた。

「大隣さんは、手術をしても完全にしびれがなくなることはなかったと話してくれました」

 引退か手術をして復帰するかの二択。必ず治ると信じてメスを入れた・・・

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