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2015年MLB有望選手は?

 



2015年MLB有望選手は?


 今年はどの若手選手に注目をするか? メジャーリーグは投手・野手ともにスプリング・トレーニングが始まり、シーズン開幕までにトレードでの動きがある可能性はあるものの、オフほどの活発な動きはなくなると思います。そこで今回のコラムは2015年のメジャーリーグプロスペクト選手についてお伝えしたいと思います。

 トップ・プロスペクトに選ばれる要件をおさらいしたいと思います。

(MLB)ルーキーステータス

●打者は At bat(打数)が130以内。※打数ですから打席数ではありません。四球などを除いたものです。
●投手は、50イニング以内。
●25人ロースター(登録選手枠)在籍期間が累積で45日以内。(試合に出ていなくても、試合に出られるよう登録されている期間が)前年までに45日を超えていないこと。)※25人枠に入っている間にDL(故障者リスト)やミリタリー(軍隊服役)期間が重複していればそれは除く。
●なお、登録選手枠は、毎年9月1日から40人に拡大されるが、この期間はルーキー資格規定の対象外。

 さて、今回発表をされた上位のほとんどの選手がまだメジャーデビューしていないフレッシュな顔ぶれです。仮に上記のルーキーステータスを超えれば、このトッププロスペクト・ランクから除外されていき、シーズン中にこのランキングが繰り上がっていく仕組みになっています。ちなみにトップ・プロスペクトのランキングから外れたからと言って、その年のルーキーオブザイヤーの候補から外れる事はありません。

2015年の上位10名とその他の注目選手のランキング

1.バイロン・バクストン (Byron Buxton)(ツインズ)OF
2.クリス・ブライアント (Kris Bryant)(カブス)3B
3.カルロス・コレア (Carlos Correa)(アストロズ)SS
4.フランシスコ・リンドア (Francisco Lindor) (インディアンズ)SS
5.アディソン・ラッセル (Addison Russel) (カブス)SS
6.ルーカス・ギオリート (Lucas Giolito)(ナショナルズ)RHP
7.コーリー・シーガー (Corey Seager)(ドジャース)SS
8.フリオ・ウリア (Julio Urias) (ドジャース)LHP
9.ジョーイ・ギャロ (Joey Gallo)(レンジャーズ)3B
10.ノア・シンダーガード(Noah Syndargaard)RHP

その他の有望選手楽しみな選手

*15.アーチー・ブラッドリー (Archie Bradley)(Dバックス)RHP
*30.マーク・アッペル (Mark Appel)(アストロズ)RHP

 2014年、2015年と2年連続でミネソタ・ツインズのバイロン・バクストン選手が1位に選ばれました。MLB公式サイトの他に2つでランキング1位となったのが、ミネソタ・ツインズのバイロン・バクストン選手は2012年ドラフト1巡目全体2番目指名の外野手で、2014年は故障で長期離脱したものの、健康な状態の時には「5ツールプレーヤー」としての才能をいかんなく発揮している選手です。ツインズはこのバイロン・バクストン選手の教育・指南役としても期待して名手のトリー・ハンター選手と契約したとも言われており、2015年にメジャーでその姿を見る可能性が高い選手の1人ではないでしょうか。

 それに続くのが、シカゴ・カブス傘下のクリス・ブライアント選手です。2013年1巡目全体2番目指名の三塁手なのですが、カブスは内野手に評価の高いプロスペクトが揃っていることや、ブライアント自身がサードの守備が特別に優れているわけではないので、外野にコンバートされる話が出ています。

 今年のスプリング・トレーニングでは実際に外野手としてもトレーニングもしております。2014年は2Aと3Aの合計で打率.325/本塁打43/打点110/出塁率.438/長打率.661という圧倒的な成績を残し、もはやマイナーでやり残したことはないと言える成績を残しているので、2015年にメジャーデビューをすることが確実だと思っております

 3番目がジェフ・サマージャ選手とジェイソン・ハメル選手の両者を放出するトレードで、アスレチックスからカブスに移籍したアディソン・ラッセル選手です。ラッセル選手は2012年ドラフトの1巡目全体11番目指名でアスレチックスに入団した右投右打の遊撃手です。ラッセルを獲得したことについて質問されたセオ・エプスタイン社長が、「見逃すには惜しすぎる選手だ」と答えていたのが印象的です。

 打撃が高く評価される一方で、守備に関しては飛び抜けていないものの、カブスの遊撃を守れるスターリン・カストロ選手やハビアー・バエズ選手よりは優れていると評価しています。2015年に昇格する可能性がある選手の1人である事は間違いありません

 続くのが、2012年ドラフト1巡目全体1番目指名でアストロズに入団した遊撃手のカルロス・コレア選手です。長打と打率を期待できる打撃と平均以上の肩の強さと柔らかいグローブさばき、そして盗塁ができるスピードを兼ね備えているため高い評価をうけています。ただ、2014年シーズン終了時でシングルAに所属しており、2015年のメジャー昇格の可能性はほぼありません。シングルAでは打率325/出塁率.416/長打率.510で20盗塁を記録しています。

 クリーブランド・インディアンスで期待されているのが2011年ドラフト1巡目全体8番目指名のフランシスコ・リンドール選手です。地元メディアやファンの中には2015年の昇格を期待する声があるものの、GMと監督ともに慎重な姿勢で、早くても2015年9月頃、遅くても2016年がメジャーデビューとなるのではないでしょうか。守備が高く評価されていている選手で、肩、守備範囲、グラブさばきなどに優れ、マイナーリーグの遊撃手の中でベストと我チームのスカウト人も評価しております。

多くのプロスペクト選手を抱えているチームは?


 トップ100全体ではチーム別の内訳は以下のようになっています。

* 7名:メッツ
* 6名:レッドソックス、ツインズ、パイレーツ、カブス、ダイヤモンドバックス、ロッキーズ
* 5名:ロイヤルズ、レンジャーズ
* 3名:ナショナルズ、ドジャース、ブルージェイズ、パドレス、フィリーズ
* 2名:オリオールズ、ヤンキース、レイズ、インディアンス、ホワイトソックス、エンゼルス、マリナーズ、ブレーブス、マーリンズ、ジャイアンツ
* 1名:アスレチックス、ブルワーズ、レッズ
* 0名:タイガース

 メッツは投手のプロスペクトが多く評価されていて、メジャーレベルでも若い実力のある投手が揃っているため、数年先には両リーグ屈指の投手王国になる可能性を持っております。皆さんの好きなMLBチームにはどれくらいのプロスペクト選手がいたでしょうか?レッドソックスは投手と野手のプロスペクトを多く抱えているのですが、問題はうまくメジャーレベルでアジャストさせることができるかどうかで、特に2014年はその点で苦労したのではないかと思います。2015年にその課題を克服できるか注目されます。

 個人的にはカブス、ツインズ、アストロズはメジャーレベルでも若い選手が多く、現在抱えているプロスペクト選手が昇格して、成熟してくる数年後に、面白いチームになると思います、その中でも特にカブスは長打力に優れる野手を多く抱えているため、これから数年間の注目チームしてもらいたいです。プロスペクトランキングに人数が少ないチームにもパターンがある事が分かります。

(1)トレードでメジャーレベルの選手を獲得するためにプロスペクトを放出した。(2)多くのプロスペクトがメジャーデビューをした。(3)ファームシステムがあまりうまく機能していない以上の事などが挙げられるのではないかと思います。

 特にデトロイト・タイガースはファームシステムがうまく機能していない上に、戦力補強でドラフト上位指名の選手を次々と放出しています。上記のプロスペクトランキングが全てではありませんが、数年後を見据えると不安があることは否定できません。アスレチックスはアディソン・ラッセルを始め、シーズン中の戦力補強でプロスペクトを次々と放出したことと、オフで主力選手を放出したものの、あくまでもメジャー経験があるような選手を多く獲得したため、”プロスペクト”というカテゴリーの選手層が薄くなっています。

 カージナルス、レイズ、マリナーズ、オリオールズ、インディアンスはメジャー昇格してしまったプロスペクトが多く、マーリンズはそれにくわえてトレードの交換要員としても放出しているため、少なくなっています。またパイレーツは育成で成功しているチームで、すでに多くのプロスペクトをメジャー昇格させているのですが、それでもマイナーに期待できる選手を抱えていますので、その育成力はメジャーでも目を見張るものがあるチームです。2015年にどのプロスペクトがメジャーに昇格し、どのように頭角を現すのか、今年も楽しみです。

著者PROFILE
1950年代生まれ。現役を引退後、MLBスカウトに転身。全米だけではなく日本球界にも太いパイプを築き、スカウティング活動に余念がない。
現役MLBスカウト「メジャーリーグレポート」

現役MLBスカウト「メジャーリーグレポート」

現役MLBスカウトによる連載コラム。スカウトならでは視点で日米の選手をジャッジするほかMLBについても語る。

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