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女子野球WCの最高責任者!国際大会の委員として活躍する橘田恵さんに直撃!

 

世界中の選手があこがれるW杯やプレミア12といった国際大会。各試合を運営するのはWBSC(世界野球ソフトボール連盟)のテクニカル・コミッショナー(TC。技術委員)と呼ばれる人たちだ。ほとんど知られていない役職だが、世界中から招集された9人ほどのTCたちは、いずれも野球をよく知る精鋭ばかり。橘田恵さんは今年9月に行われた第7回女子野球W杯でそのTCたちを束ねる最高責任者、テクニカル・ディレクター(TD)に就任し、大会を成功に導いた。
取材・文=飯沼素子

WBSC会長のリカルド・フラッカーリ氏と


アジア人女性初の国際大会最高責任者


 そもそも、国際大会はどのように運営されているのだろうか。橘田恵さんの話に入る前に、まずそれを紹介しよう。

 大会を仕切る最高責任者はTD。その下にTCと現地スタッフがいて、TCたちはTDに割り振られた試合を管理する。例えば試合前には参加国が持ち込んだバットが規格に合っているか一本一本チェックし、試合が始まれば選手団や審判に不正がないか監視する。監督と審判がもめれば仲裁に入ることもある。退場処分が発生すれば翌日、チーム代表のもとへ行き、罰金600米ドル(大会規定)の請求通知書を手渡す。試合が終われば、報告書を書くのも仕事の一つだ。

 MVPなどの選考はTDとTCが協力して行う。どちらも野球や審判の知識、調整能力、公正さが求められるスペシャリストである。もちろん語学力は必須で、最低でも英語が話せることが求められる。

 橘田さんは2009年、25歳のときに、当時の全日本アマチュア野球連盟の推薦を受けて、U-16世界野球選手権大会で初めてTCを務めて以来、U-12、U-18、女子野球の各W杯で、計5回TCを務めた。その活動が評価されて、今年9月の第7回女子野球W杯(韓国開催)ではWBSCから最高責任者のTDに指名されたのである。

 この大役に指名されたのは、日本ではほかに麻生紘二さん(73歳)がいるだけ。麻生さんはWBSC大会委員で、全日本野球協会アマチュア野球規則委員会前委員長という野球界の重鎮だ。

 それだけに橘田さんのTD就任は日本野球界にとってもうれしいニュースだった。しかもアジア初の女性TDにして史上最年少のTD(33歳)である。

「正直言って受けるべきか悩みました。でも相談した人たちみんな、名誉なことじゃない、おめでとう、と言って喜んでくれたので覚悟を決めました。

 TDは試合が滞りなく進むように、大所高所からあらゆる問題に対処するのが仕事です。最初の仕事は真っ先に現地に入って、審判長と一緒にグラウンドルールを作ることでした。球場って安全性やルール上、チェックしないといけないところがいろいろあるんです。

 例えば今回、ベンチの端にポールや支えのワイヤーがあったので、選手がぶつかってケガをしないようにクッションを巻いてもらったり、フェンスの脇に隙間があったので、そこにボールが直接入ったらホームラン、どこかにぶつかって入ったらツーベースとか、そんなことを細かく決めていきました。

 雨などによる試合や練習時間、場所の変更も仕事の一つです。準決勝では電気系統のトラブルで照明が15分間消えたので、すぐに情報を集め、復旧した瞬間に両監督と相談して試合再開時間を決めました。

 国際大会ともなると予想外の訴えをしてくる国もあるんですよ・・・

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