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【夏の甲子園プレーバック】ソフトバンク 上林誠知にとって早過ぎた夏

 

2試合でわずか1安打と輝きを放てなかった上林


 高3春のセンバツでワンバウンド打ちの二塁打など内容の濃い3安打を残した。オリックス時代と第2回WBC決勝で見せたイチローにだぶるその姿。あこがれの存在の冠を戴く天才打者と呼ばれ、仙台育英の上林誠知の注目度は増した。

『主将・四番』で迎えた最後の夏。抽選会では春夏連覇を狙う浦和学院を引き当て、初戦から厳しい戦いが幕を開ける。

 宮城大会では打率.435、2本塁打、7打点の好成績をマークし、甲子園でも打線をけん引していくものと思われた。しかし、チームが手に汗握るシーソーゲームを繰り広げ、熊谷敬宥のサヨナラ打で勝利をもぎ取った初戦。上林のバットは沈黙した。

「打てる気、しなかったですね……」

 初回、2回の打席でともに三振。10対10の同点で迎えた8回裏の第5打席は、無死満塁の好機だった。「さすがに打てるだろう」。気持ちを新たに打席に向かったが初球、ど真ん中をファウルにすると、「ああなったらもう打てないです」。チェンジアップで空振り三振に倒れた。

「何でしょうね。恥ずかしいというか」。勝利の瞬間は歓喜の輪に加われず、少し離れた場所から見守った。

 2回戦の常総学院戦でも上林の状態は上がらず、チームは1対4で敗れた。試合後、佐々木順一朗監督は4回表の攻撃を悔やんだ。無死一、三塁で上林の打球が右翼へ飛ぶ。だが、外野手のホームへの好返球と捕手の体を張ったブロックで併殺に。奪えなかった先制点。上林はこの試合、6回に中前打を放ったが、この1安打がこの夏の甲子園での唯一のヒットとなった。

「上林の打撃は、すべて紙一重でしたね」と佐々木監督が漏らすと、上林自身は「最後まで頼りないバッターでした。チームに申し訳ない」とポツリ。チームの象徴は、早過ぎた夏を静かに振り返った。

写真=BBM
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