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プロ野球仰天伝説

【プロ野球仰天伝説32】1球目からエゲツなく曲がった平松政次のカミソリシュート

 

長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。

直球と変わらない球速


打者からは浮き上がって見えたという平松のシュー


“カミソリシュート”と言われ、恐れられた大洋・平松政次の魔球だが、実は高校、社会人を通じ、シュートは投げていなかった。

 使い始めたのは1970年の春季キャンプ、雨のため体育館で練習していたときだ。そのとき先輩選手に「お前はこれしか球種はないのか」と言われ、「じゃあ」と投げたのがシュートだった。それも下が平らで滑りやすい体育館にもかかわらず、いきなり驚くほど曲がったのだからすごい。

「社会人時代に、先輩から縫い目に指をかけず、肩をストレートより早く開いて手を遅らせて投げれば、ひねらなくてシュートになると言われたのを思い出して、そのとおり投げただけだったんですが」

 この年、平松は25勝を挙げ、最多勝を手にしている。シュートというと沈むイメージもあるが、平松の球はライジングボールと言われ、浮き上がって見えた。曲がりも大きく、ベースの真ん中をめがけると、ちょうどコーナーに決まる。

 当時はストレートが150キロ以上出ていたが、シュートもほとんど変わらぬ速さ。それが自分に向かってくるのだから右打者は怖い。巨人長嶋茂雄が大の苦手とし、「その軌道が夢に出てきたことがあるくらいだった」という。

平松政次(ひらまつ・まさじ)
1947年9月19日生まれ。岡山県出身。岡山東商高から日本石油を経て、66年秋の二次ドラフト2位で大洋に指名され、翌67年秋大洋へ。右打者の内角へ鋭く切れ込む“カミソリシュート”を駆使してエースに成長、故障に苦しみながらも低迷するチームを長く支えた。対巨人通算2位の51勝を挙げている。84年限りで現役引退。主なタイトルは最優秀防御率1回、最多勝利2回、沢村賞1回。通算成績635試合登板、201勝196敗16セーブ、防御率3.31。

写真=BBM
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