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申告敬遠もよろしく

 

3月3日、ナゴヤドームで行われた中日楽天のオープン戦の3回表、右前打でホームを狙った楽天の二走・今江年晶だったが、判定はアウト。梨田昌孝監督のリクエストによりリプレイ検証が行われ、判定が覆った


 3月3日にナゴヤドームで行われた中日対楽天のオープン戦(星野仙一氏の追悼試合)と、午後7時から同球場で行われた、侍ジャパン対オーストラリア代表の試合を、ダブルヘッダーで取材したのだが、運よくこの2試合で開幕前のトピックスに挙げられている、申告敬遠(故意四球の申告制)とリプレイ検証制度「リクエスト」の両方に出くわした。

 まずはリクエスト。第1試合の3回表、楽天の攻撃の場面だ。二死満塁からライト前へ詰まった打球が落ちると、二塁走者の今江年晶が果敢にホームを狙う。中日のライト・モヤのバックホームはまずまず正確だったものの、捕手・大野奨太のタッチよりも、スライディングしながら伸ばした今江の左手が一瞬早くホームへ(写真)。ところが、球審・原信一朗の判定はアウト。今江が必死にアピールするのを見た梨田昌孝監督はリクエストを要求し(監督以外、リクエストは要求できない)、審判団はリプレイ検証に入る旨、場内アナウンスをして審判控え室へと姿を消した。

 注目していたのはこの時のナゴヤドーム側の対応だった。これまでならば、審判団の検証が終わるまでファンは待ちぼうけを余儀なくされていたが、果たしてどうか。

 30秒ほどの沈黙ののち、オーロラビジョンにはリプレイ映像がうつし出され、これにはスタンドも大喜び。映像によって明らかにセーフであることが確認できると、中日ファンで埋まった右翼スタンドは諦めたような溜息、一方の左翼スタンドは大いに沸き、審判団の説明(判定は覆り、セーフ)を待たず、場内はこのプレーの結果に納得したようだった。

 ちなみに、リプレイ検証制度「リクエスト」の導入が決まった際、新たなルールとして「リプレイ検証中の球場ビジョンには、審判団がリプレイ検証で確認している映像と同じ映像を放映することが出来る」の一文が明記されている。あくまでも「出来る」なので、判断は主催球団、球場側に委ねられるのだが、ファンを待ちぼうけさせる選択肢など、ないということだろう。

 第2試合の侍ジャパンの試合でも、小林誠司が三塁前にボテボテの当たりを放った際(7回裏)の、一塁のセーフ判定に対して、オーストラリア代表監督がリクエストを要求。リプレイ映像ではセーフは明らかで、その瞬間が映し出されるたびにスタンドは「セーフ」の大合唱。予想外にファンは楽しんでいるようだった。

 話は逸れるが、制度導入以前には、試合時間が伸びることを懸念する声や、プレーを中断することに異議を唱える有識者もいたが、リプレイ映像の検証時間は「5分以内」と定められている。監督が抗議して引き下がらない(中断する)ことも、これまでしばしばあったわけで(現在はあり得ないが、かつて阪急の上田利治監督が1時間19分抗議したこともある)、白黒はっきりつけるのだから、プレーする側も観戦している側も、スッキリと納得するのではないか。

 一方で、申告敬遠は残念だった。第2試合の8回裏、侍ジャパンの攻撃(2対0で日本がリード)のときのこと。一死二、三塁で六番の外崎修汰が打席に向かう途中、球審に何やら話しかけられると、驚いたような表情を浮かべて一塁へ。オーストラリア代表サイドが故意四球を選択することを球審に伝えたからだが、ネクストバッタースサークルにいた大山悠輔も、打席に入るよう球審にうながされるまで事態を飲み込めていないようだった。それはスタンドの観客も同様で、右翼スタンドに陣取った侍ジャパン応援団は、場内に「八番、ファースト、大山」のアナウンスがあってはじめて、故意四球に気付いたようだ。

 このとき、アナウンスはもちろんなく、ファンは置き去りに。せめてビジョンに「故意四球」なり「敬遠」なりの表示をすべきではなかったか。翌4日に京セラドーム大阪で行われた侍ジャパン対オーストラリア代表との第2戦も同様で、リプレイ検証中の映像はやはりここでもビジョンに流されたものの、申告敬遠はスルー。日本代表のゲームゆえに、用意がなかっただけで、ペナントレース中は、安打が出た際の「NICE BATTING!!」などと同じように、表示(もしくはアナウンス)されるものと信じたい。

文=坂本 匠 写真=榎本郁也
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