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【MLB】右肩上がりのカクタス・リーグ。大谷加入効果でさらに数字が伸びるか!?

 

2009年から15チームがキャンプを張るアリゾナ州は、観客も増え続けているが、大谷のエンゼルス加入でさらなる経済効果を期待している



 アリゾナで春のキャンプを送るMLB15球団のリーグをカクタス・リーグと呼ぶ。カクタスとはサボテンである。オープン戦が始まる前、リーグのプレジデント、ジェフ・マイアーさんが大谷翔平のエンゼルス入りを大歓迎していた。

「今年はすごいことになりそう。100マイルの真っすぐを投げ、500フィートの打球を飛ばす日本のべーブ・ルース。わくわくしているよ」

 カクタス・リーグは、かつてはフロリダのグレープフルーツ・リーグに比べ、規模の面で劣っていた。それが税金を投入して、豪華なキャンプ施設を次々に建設。ドジャーズ、インディアンズ、ロイヤルズなど、元はフロリダでキャンプをしていたチームを誘致、09年に15球団に増え、フロリダと数で並んだ。そして観客動員数も右肩上がり。

「2013年から12パーセントも観客数が増加して、昨季の194万1347人は新記録。WBCのおかげで試合数が増えたのに加え、雨で中止の試合が一つもなかったのも良かった。今季も大谷が来たことで、また増えてくれればいい」と期待大だった。

 民間の調査によると、カクタス・リーグの経済効果は年に6億ドルに上り、アリゾナ経済を牽引するまでに拡大している。試合の観客の60パーセントは他の町から来た旅行客。ホテル、レンタカー、レストランなど旅行産業の収益が一気に増える。「エンゼルス関係者から、日本からの記者が連日100〜120人に上ると聞いた。大谷のニュースが日米で大々的に報道されれば、観客数はさらに増える。楽しみだよ」とのこと。しかしながら、大谷が出場する試合は当初、大幅な動員増加につながらなかった。

 2月24日(土)テンピ、投手デビュー戦。9558人収容のディアブロスタジアムに63パーセントの6019人。26日(月)ピオリア、DHのデビュー戦。1万2339人のピオリアスタジアムに22パーセントの2700人。全米注目の二刀流が出るというのになぜなのか?理由はエンゼルス首脳陣が大谷の体調を最優先し、いつでも変更できるよう予定をギリギリまで明かさなかったから。24日の試合は2日前、26日はその日の朝だった。

 エンゼルスは大谷を獲得したときは、翌日の入団会見で早くも名前入りのユニフォームとTシャツを売り出すなど商売意欲旺盛だったが、カクタス・リーグのチケット売上は球団の懐に入らず、球場を所有する地元(テンピ市)に行くことで、商売っ気は全くなし。大谷の2試合目登板は練習試合にした。

 マイアーさんにとって、もう一つ頭が痛いのは新たな労使協定の取り決めで、MLBがシーズン中の休みの日を4日間も増やし、ゆえに公式戦開幕日が3月29日と早まり、オープン戦は2月23日が第1試合と、史上最も早くなったこと。しかしながら一般のファンは2月にオープン戦と言われてもピンとこない。「ファンの方に、今年は早めですからチケット購入をお忘れなくと告知はしてきましたが、そこはなかなか」と。

 ちなみにエンゼルスは昨季11万4780人動員で1試合平均6752人。71パーセントの入りだった。大谷効果、出足は今一つだが、今後彼が期待通りの大暴れをすれば関心は当然高まる。数字は伸びるのか、気になるところである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images

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