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“甲子園準優勝右腕”慶大・大西健斗 投手としての“神宮デビュー”を信じて待つ!

 

昨年8月(写真)、第一合宿所で当時1年生の慶大・大西(北海高)を取材。4月で2年生となる現在はリーグ戦初登板を目指し、我慢の時を過ごしている


 甲子園ではセンバツ高校野球が盛り上がりを見せているが、春王者が決まれば、全国各地で大学野球シーズンが本格到来する。

 小社では春季リーグ戦へ向けた展望号を制作している。東京六大学6校、東都大学一部6校のマネジャーに個人データをお願いし、30人の部員(マネジャー1人を含む)の写真名鑑を掲載する。この30人が原則、リーグ戦での主力メンバー(ベンチ入りは選手25人)となる。

 慶大からのアンケートのメール送信を、首を長くして待った。

 一刻も早く、確認したい件があったからだ。背番号「21」。受信トレイからエクセルファイルを開くと「空位」だった。ホッと一安心した。

 2016年夏の甲子園準優勝投手・大西健斗(2年・北海)が、この30人の写真名鑑から外れた。メールが届く約1週間前、慶大・大久保秀昭監督からは取材を通じて聞いていた。

 1年春、秋の展望号とも背番号21・大西の顔写真を掲載。だが、今号では高校時代から痛めている右ヒジ痛の回復が思わしくなく、そのリストから漏れた。大西は北海道から上京してきた昨年2月、メンバー候補約30人が生活する「第一合宿所」に入寮。順調な大学生活のスタートを切った。打撃センスが評価され、ベンチ入りした春は野手として3試合の出場を果たしているが、秋は出場ゼロ。激しいチーム内の生存競争の中で、第一合宿所から退寮するという厳しい現実を味わった。

 投げられないわけではない。あと一歩をいつ、踏み出すか――。ブルペンでの立ち投げでは7、8割程度の力でも「135キロは出ている。早く戦力の一員になってほしい。良いのは分かっている」と、大久保監督は目を細める。

 大西が発奮する材料はそろっている。昨秋、慶大は7季ぶりのリーグ優勝を遂げたが、その原動力となったのは左腕・佐藤宏樹(2年・大館鳳鳴)と右腕・関根智輝(2年・都立城東)。つまり、ライバルである同級生投手に、大きく水を空けられてしまったのだ。

 しかし、大西は決して焦らない。長く野球を続けるために、万全になるまでマイペース調整を貫く。入学当時、そして昨年8月にインタビューをした際にも「4年生のときに優勝に貢献したい」と語ったことがある。

 昨年、大久保監督は「管理下に置いておきたい」と、右ヒジの調子が上がらないコンディションでも、2月下旬からの沖縄・石垣島キャンプにも帯同させて、英才教育を積ませた。

 だが、今年は違う。2年生となり、大西とはやや距離を置く状態となったが、指揮官の期待は不変だ。大西に限らず、結果を出した者、努力した者には必ず、チャンスを与えるのが元近鉄・大久保監督の指導理念。一軍メンバーだけでなく、二軍以下の練習も早朝から日が暮れるまで、しっかり見ている。第一合宿所を退寮した際にもこう、叱咤激励している。

「周りを納得させる形を残してから、上がって来い!!」

 背番号「21」を、誰にも手渡さなかったのが、常に選手へ親身な大久保監督の配慮であり、“メッセージ”が込められている。大西にとっても、心をつなぎとめる「支え」となったのは言うまでもない。あとは指揮官の「思い」にこたえるしかない。投手としての“神宮デビュー”を信じて待っている。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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