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センバツ現場発

センバツ現場発/頂点まであと2つ。東海大相模高のキーワードは「平常心」

 

第90回記念選抜高校野球大会が3月23日、阪神甲子園球場で開幕した。球児による13日間(準々決勝翌日の休養日1日を含む)の熱戦が繰り広げられるが、現場でしか分からない「センバツリポート」をお届けしていく。

「意気込み過ぎないこと」が重要


東海大相模高は2度目の優勝を遂げた2011年以来の4強進出。4月3日の準決勝は智弁和歌山高と対戦する


 明日(4月3日)の準決勝を前に、2日は休養日で、4強進出校は調整を行った。7年ぶり3度目の優勝を目指す東海大相模高(神奈川)は、第1試合で智弁和歌山高と対戦する。

 頂点まであと2つ。キーワードは「平常心」だ。春のセンバツを2度(2000、11年)、夏の選手権も1度(2015年)制している名将・門馬敬治は落ち着いている。名門校とはいえ、選手にとっては初の甲子園。打撃練習中、主砲の森下翔太(3年)を、ケージ後ろのベンチに呼び出した。今大会、3試合で12打数3安打、1打点とやや苦しんでいる。約5分間、ヒザを突き合わせて話し込んだ。

「(大会も)終盤にきて、どのチームも注目される選手というのは、17、8歳の高校生ですから、余計なことを考えてしまう。『普通の森下でやってくれたらいいよ!!』と。チーム全体にも言えることですが、意気込み過ぎないこと。いつもの姿勢で臨みたい」

 自身が率いた2000年春の決勝、智弁和歌山高を4対2で下し、紫紺の大旗を神奈川へ持ち帰っている。

「(監督就任)1年目なので、勢いでやっていた。覚えていない(苦笑)。記憶にあるのは、応援がすごいな〜ということ。智弁和歌山というのは豪打、猛打がついて回る。何十年も続けてこらえるのは、高嶋先生(仁監督)の信念。選手一人ひとりが最後まで迷いなく、バットを振る」

 門馬監督は準決勝進出を決めた直後、壮絶な打撃戦を制した智弁和歌山高の準々決勝(対創成館高)を観戦し「選手の力はもちろん、智弁の独特の応援も力になっている。甲子園のすごさであり、怖さだと思った」とあらためて警戒を強めたという。

カギを握る初回の一番・小松の打撃


 冒頭で「調整」と書いたが、この日の練習は、軽く汗を流すとか、体をほぐすとは、まったく無縁だった。「ウチには調整はありません」(門馬監督)。打撃練習では、主将で遊撃手の小松勇輝(3年)が三遊間の痛烈なライナーをダイビングキャッチ。大事な一戦を前に、ケガだけは避けたいところも「試合では飛び込むのに、練習では飛び込まないのはおかしい。練習も試合だと思って全力にやります」。門馬監督も「時間は短いが(相模の)グラウンドと変わらない形でできた」と納得顔。それは、宿舎での生活にも出ているという。

「横浜(高校)の渡辺先生(元智、元監督)が『甲子園は力が発揮できずに負けることが多い』と話していました。それはなぜなら、グラウンドではないところで落ち度、やらないといけない部分が足りないと、そうなる、と。こちらに入ってから2週間、余計なことを言わなくなってきた。多くの指導者が『当たり前のことを当たり前にやろう!!』と言いますが、なかなか当たり前にできない。そこが一番、難しい。ただ、今回の選手たちは反応が良い」

 甲子園に来てから当たり前のことを実践しているのではない。常日ごろからの積み重ねが落ち着いた生活、万全の準備が野球につながる。いつも評価に手厳しい指揮官が確かな手応えを得ているのだから、本物と言える。

 トーナメントであるから、先を見た戦いはできない。目の前の相手、つまり明日の智弁和歌山高に勝つことだけに集中している。

 だが、チームとしての最終目標は「打倒・大阪桐蔭」。

 センバツ選考委員会(1月26日)で出場が決まって以降、寮内の談話室のホワイドボードにはこの文字が書かれたという。小松主将は言う。

「僕たちの世代では一番、力がある。一番上を目指していく上で、イメージしてやってきました。口で『打倒・大阪桐蔭』と言うこともありました」

 明確なビジョンがあったからこそ、厳しい冬場の練習も全員で乗り越えることができた。そして、甲子園も一戦必勝で、準決勝まで勝ち上がってきた。結果次第では、史上3校目の春連覇を狙う大阪桐蔭高との頂上決戦の可能性もある。

 究極は「東海大相模グラウンド=甲子園」。主将・小松へ、すでにこの域に到達したかを確認すると「まだ、3試合しかしていませんから(苦笑)。庭と思えるくらいになりたい」。
 
 日本航空石川高との準々決勝では先頭打者本塁打。一番・小松の抜群の“入り”が、東海大相模高を勇気づかせ、同校が追求する「平常心」で、試合の主導権を握れる。表、裏の攻撃に関係なく、1回の小松の第1打席が、東海大相模高のゲームの流れを決める。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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