今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 『顔色を変えた宇野の怒り』
今回は『1961年5月8日増大号』。定価は10円上がって40円だ。本文巻頭は『ベロビーチノイローゼの
巨人軍』。開幕から波に乗れず、特にドジャースから学んだ秘密兵器のはずのダウン・スイングに選手たちが悩んでいるらしい。
広岡達朗は「アメリカの野球ではあの打法でいかないと駄目なのです。ただ残念なことに日本では必ずしも、ああしなくても打てるようですね」と語っている。
この話は難しい。ダウン・スイングはゴロ狙いの大根切りスイングのように書かれるときもあるし、遠回りになりがちなバットスイングだが、上から最短距離でたたく意識を持てば、自然にレベルスイングになる、という意味だったと言う人もいる。
いずれにせよ、
川上哲治監督の現役時代はきれいなレベルスイングだった。
ほかバントを使いすぎるという批判もあったようだが、川上監督が「そんなら打たせて三振したらどうでしょう。あんなところで打たせやがってときっと非難されるでしょう」。
前回、足を使う意外性もあったという話を書いたが、早くもより確率の高い、のちの石橋を叩いて渡る策に近づき始めているようだ。
今回は『12球団週間報告』から2つほどネタを紹介しよう。
1つは大毎で『顔色を変えた宇野の怒り』。駒沢球場のヤジで激怒し、大毎・
宇野光雄監督が猛抗議したという話だ。
マウンドは1年目、19歳のディサだったが、東映ファンが投球フォームに入る際、鐘や太鼓で威かくするようにし、動揺したディサが悪送球。すぐベンチを飛び出し、審判に抗議。それでもやめないファンに業を煮やし、代表席にいた大毎の球団代表に「明らかなルール違反です。これ以上続けるようなら、うちは退場の覚悟がある。東映のオーナーにそう言ってください」と、顔色を変えてまくし立てたという。
もう1つは近鉄。契約に不満を持っていたブルームが、スタメン起用されながらケガを理由に試合が始まってから勝手に帰ってしまったことに対し、
千葉茂監督が怒っているのだが、そのコメントがこの人らしい。
「大体、青い目のオッサンはジャパンへ出稼ぎにくるという気持ちがあかんわい。日本の土に骨を埋めるといってもどだい無理なこっちゃが、言葉がチンプンカンプンでは声もかけられん。あっちが声をかけてきても横文字にゃ弱いし、冗談ひとつもいえんわい。これじゃお互いうちとけられん。ワシもこれからイングリッシュの勉強をするかな」
愚痴にも愛嬌がある人だった。
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では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM