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屈辱を力に!名門・横浜高の絶対的エースに成長した板川佳矢

 

一念発起して信頼を回復


横浜高は桐光学園高との県大会優勝を8対1で制して優勝。エース左腕・板川は6回途中1失点と、しっかりとゲームを作った


 2015年秋から名門・横浜高を率いる平田徹監督は、この春の神奈川県大会を通じて「1対0で守り勝つ野球」を目指してきた。

「点を取られなければ、負けることはない」

 6試合で59得点。準決勝まで5試合連続コールド勝ち。桐光学園高との決勝もすべての奇数イニング(1、3、5、7、9)で小刻みに得点を重ね、8対1と快勝している。伝統の強力打線が目立ったが、6試合で2失点。平田監督は「最後まである程度できたのは収穫」と、目標としてきたスタイルが、公式戦で成果として出たことを素直に喜んだ。

 強固なディフェンス力の象徴となったのが、左腕エース・板川佳矢(3年)だ。今大会6試合中、準決勝を除く5試合に先発するフル回転。5勝を挙げる活躍を見せたが「毎日、投手陣には『ゼロで行くぞ!!』と言ってきたので、失点(準々決勝と決勝で、板川が各1失点)されたくなかった。(5月19日から5日間、千葉開催)関東大会ではゼロでいきたいです」と、現状に満足することはない。

 どん底を味わった。昨秋の県大会は鎌倉学園高との準々決勝で屈辱の8回コールド敗退を喫している。横浜高は15失点と「投壊」が敗因の一つとなった。

「とにかく、負けてからはきつかった……」

 板川は2年夏の甲子園も背番号1を着けており、実績十分。ところが、秋の敗退を経てエースの座をはく奪された。その後の練習試合でも「ベンチ入りがギリギリ」と、立場は厳しくなる一方。平田監督と投手指導を担当する金子雅部長はいったん、板川と“距離”を置いている。冬場の強化メニューも1学年下の149キロ左腕・及川雅貴(2年)のみに手渡すほどの徹底ぶり。決して見離したのではなく、心の底からの奮起を期待していたのだ。

 また、各部員が言いたいことを書いて提出する野球ノートには、板川の印象について「責任感がない。プレーが軽い」と、厳しい内容が綴られていたという。平田監督との面談で伝え聞いた板川は「練習で、行動で示すしかない」と一念発起。手元になかった冬場の強化メニューも「及川からこっそり聞いて、その倍をこなしていました」。地道な努力を見ていたナインから「変わってきたね!!」と、仲間からの言葉が励みとなり、信頼を回復した。

 平田監督は夏に向けた投手陣について「3本の矢」で勝負すると明言している。大黒柱の板川に、2年生の及川と右腕・黒須大誠の3人で回していくというもの。板川は「2人に何かあったら、自分の責任になる。試合でも及川、黒須が先発のときは、寮からグラウンドまで15分、一緒に歩いて行っている」と、リーダー役を買って出ている。こうしたエース像は1年時に藤平尚真楽天)、左腕・石川達也(法大)、2年時に右腕・塩原陸(国際武道大)の背中を見て学んだものである。

 屈辱を力に変えて、心身ともに名門・横浜高の絶対的エースに成長した板川。平田監督は「全国で勝つことを志に置いている。まだまだ引き締めて、高みを目指していく」と語った。背番号1も当然、同じ思いである。昨夏の甲子園1回戦(対秀岳館高)は、先発ではなかった。救援(5番手)で無失点に抑えたものの、初戦敗退(4対6)。最後の夏は、松坂大輔を擁して春夏連覇を遂げた1998年以来、20年ぶりの全国制覇が唯一の目標だ。

文=岡本朋祐 写真=長尾亜紀
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