今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 連載推理小説『10番打者』がスタート
今回は『1961年11月27日号』。定価は30円だ。法政二高の
柴田勲が大争奪戦の末、巨人に入団した話は以前書いたが、今度は柴田のライバル、この夏の甲子園で全国制覇を果たした怪童、浪商高の2年生、
尾崎行雄が中退し、東映に入ったという記事があった。
まず11月6日、尾崎の父親が学校に「行雄が学校に行きたくないと言うので」という理由で中退届を持ってきたところから始まる。学校はまさかの事態に大混乱となったが、実際にはかなり前から尾崎中退の噂はあったらしい。
今回も前日の5日、スポーツ新聞で「尾崎が中退し、東映入り」の記事が出た。さらに、中退を知ったことで各球団が獲得交渉のため、次々に尾崎家を訪れる。
11日には阪急、東映、南海、巨人、
阪神、大毎が、それぞれ1時間ずつ交渉し、14日の夕方、東映入りを発表した。尾崎は、「柴田君と日本シリーズでやりたいですね。それとプロに入ってやる以上は、新人王は狙いたいです」と語った。交渉1時間限定というのは、細かな話し合いというより、要は契約条件の提示時間であろう。父親とともに、親族の人物が相談役として仕切っていたらしい。それはそうだ。いきなり3000万、4000万の契約金を現金で持参されたら人間も目の色が変わる(いまの10分の1くらいの感覚か。契約金の上限は当時もあったが、ほぼ無視されていた)。
また阪神が大きく動いていた。元巨人ほかの
青田昇をコーチに招へい。従来は高校出の選手中心のスカウトで、特に東京の大学選手は取らないという方針を取ってきたらしいが、このオフは慶大・
安藤統夫、法大・
室山皓之助、関西だが関大の
藤井栄治と3人の入団が内定した。藤本定義監督の下、虎が本気になってきた。
さらに最下位に終わった大洋・
三原脩監督は自ら渡米し、
アグウィリー、マクマナス(マック)を獲得。
佐々木信也との対談に登場した三原は、ハワイのマイナーで活躍していたマクマナスについて聞かれ、
「長嶋(茂雄。巨人)も問題にならんです。おそらくもう、リーディングヒッターになりますよ」
と自信満々語っている。
この号から、佐野洋の連載推理小説『10番打者』がスタートした。佐野は作家デビュー4年目だ。
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では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM