アカデミーのコーチとして野球少年を指導する後藤さん
週刊ベースボールで連載中の「舞台裏の仕事人」で、
楽天のアカデミーコーチを務める元内野手の
後藤光尊さんを取材した。今は子どもたちへの指導をメーンに、野球解説者としても活躍している。さらに、今回は誌面に掲載できなかったが、クラーク記念国際高の女子硬式野球部でも指導を行っているそうだ。
楽天は昨年、クラーク記念国際高が女子硬式野球部を設立するにあたり、業務提携。アカデミーコーチの一人、
山崎隆広氏が監督となった。だが、指導者は監督一人。そこで後藤さんを含むアカデミーコーチが交代で教えに行っているとのことだ。
そこで驚いたことがあったそうだ。それは技術力の高さ。「捕る、投げるに関しては(男子と)遜色ないですよ」と後藤さん。硬式野球はバットもボールも重いため、男子に比べると力が劣る女子は、打撃ではなかなか同じようにはいかないが、技術でカバーしながらより高いレベルを目指している。
今年入学した1年生が一期生となるため、部員はまだ10人ほどだが、今後は女子野球の強豪高となることを目指していく。女子プロ野球が発足し今年で9年目。まだまだ認知度は高くはないが、プロの舞台を目指す選手たちは増えている。クラーク記念国際高からプロ選手が輩出されるのも、遠い未来の話ではないだろう。
このように、アカデミーコーチとして子どもたちに教えている今の仕事は、日本のプロ野球の未来を担う仕事なのだとあらためて感じさせられた。教える子どもたちには「プロ野球選手になってほしいと思っているわけではない。アカデミーでの経験を今後の人生に生かしてほしい」と願う後藤さん。だが、男女問わず、この中から高校や大学、そしてプロでも野球を続ける子どもたちが出てくるはずだ。
一見するとプロ野球とは遠い仕事をしているように見えるコーチたちだが、広い目で見ればつながっている。現役時代には見ることができなかった柔らかな笑顔で、後藤さんは今もプロ野球を支えているのだ。
文=阿部ちはる 写真=井沢雄一郎