今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 MVPが2人いた
今回は『1962年11月5日号』。定価は40円だ。
日本シリーズでは、東映が
阪神を下し日本一に。前回は阪神の2勝1分けで説明が終わったので、今回は第4戦以降をざっと振り返ってみよう。
第4戦、後楽園。東映先発はヒジ痛に苦しみ、試合から離れていた早大出身の新人の
安藤元博、阪神は
小山正明。安藤は初回に1点を許すが、2回以降は無失点で完投勝利(東映3対1)。
阪神は、この日の先発を
尾崎行雄と読んでおり、阪神・藤本定義は「安藤ならいけると、甘く見てしまった」と反省した。小山は5回で交代となったが、「審判の判定であれだけイライラしたら代えるしかない」(藤本監督)という。
なお尾崎は1戦目に打者2人に投げただけで、以後登板はない。おそらく実際には投げられる状態にはなかった尾崎を初戦で見せ、あとは「出るぞ、出るぞ」とけん制。逆に、しばらく登板のなかった安藤元は、あえて登板は無理と思わせたのだろう。
第5戦、同じく後楽園。東映・
久保田治、阪神・
村山実の先発。試合は4対4で延長戦となり、最後は11回裏、東映の新人・
岩下光一が4番手で7回途中から投げていた小山からサヨナラ本塁打(東映6対4)。
第6戦、舞台は甲子園。東映先発は安藤元、阪神は村山。3打数3安打の
張本勲らの活躍で東映が7対4で勝利し、日本一に王手。
第7戦、同じく甲子園。東映先発は久保田、阪神は小山。0対0のまま延長戦となり、10回には互いに1点ずつを取った。勝負は決したのは12回表、東映の攻撃で
西園寺昭夫が二番手の村山から決勝の本塁打。その裏は抑えに回っていた
土橋正幸が3人で斬って取った。
この日本シリーズがユニークだったのは、MVPが2人いたことだ、これは過去わずかな差しかないのに優秀選手が1人しか選べないのは不公平との声が出たためだったという。
結果、最優秀選手1位が土橋正幸。1、2戦目は先発も3戦目からは抑えに回り(といってもロングリリーフ)で2勝を挙げていた。そして第2最優秀選手が
種茂雅之。3戦目からスタメンマスクをかぶり、攻守で日本一に貢献した。なお、賞品の車は土橋に。
巨人の新人・
柴田勲が内野手転向の記事もあった。
荒川博コーチは「右でも左でも打てるので楽しみ」と語っているが、スイッチヒッターという用語は出てこない。
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では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM