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ケガ防止、予防に対する考え方の変化は?/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.143試合の長丁場のペナントレースではケガや故障がつきものですが、医療の進歩やメジャーの情報が簡単に手に入るようになった現代で、ケガ防止、予防等に対する考え方は一昔前に比較して変わってきているのでしょうか。(東京都・20歳)



A.例えばブルペンでは投球が2度→1度に。投手の肩は消耗品。MLBの考えは当然です。


元阪神・藪恵壹氏


 例えばピッチャー陣、それもリリーフ陣を例に挙げてみると、かつてはとりあえず1度ブルペンで肩を作ることが当たり前でした。「ゲームが進み、こういう状況になったらマウンドに行くから準備をしてくれ」というベンチからの指示が当然で、そこに向けて肩を作るがMLBでは常識ですが、以前の日本のシステムではそうではなかったのです。

 その日のゲームに登録されれば、出番があってもなくてもひとまずブルペンで投げる(もちろんその日の先発ではないローテーションピッチャーは別です)。しかも、かなりの強度でしっかりめに。そして本当の出番が近づくと2度目のブルペン投球で仕上げていきます。これは故障の原因の1つですよね。明らかな登板過多でしょう。

 必要でないときも肩を作ることはメジャーではナンセンスで、ゲームに登板しなかったときのブルペン投球も向こうでは1回の登板とカウントされます。肩は消耗品で大事にするMLBらしい考えですが、選手の体を考えれば当然のことだと私も思います。私もメジャーでリリーフを経験し、日本に戻ってからこの考えを伝え、阪神のコーチになってからも改革をしてきました。

 ほかにもメジャーを経験してコーチになられたり、MLBの技術を吸収しようとしっかりと勉強しているコーチやトレーナーさんも多くいますので、現在は12球団を見渡しても、ブルペンで2度肩を作る球団はほとんどなくなってきているのではないでしょうか。1つケガのリスクが取り除かれたわけです。

 コーチ時代、中にはノースローでの調整ができず、「感覚がなくなります」と言ってくる選手もいたのですが、そういう場合はブルペンには立たせず、ネットスローなどで調整するようにうながしました。また、リリーバーに限らず、長期離脱するような故障をしてしまうピッチャーの多くは投げ方が変わっていることが多く、その変化を見逃さないのがコーチの大事な役割です。

 また、私自身経験がありますが、多少の違和感でも我慢して投げ続けた結果、大ケガにつながることもあるので絶対に無理をさせないことでしょう。

 アスレチック系、医療系のトレーナーの技術も上がっていますし、ドクターなどの医療班も充実してきており、これらが連携を取ってケガ防止、予防も行っていますね。

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。

写真=BBM
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