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【MLB】再建チームであっても、勝利に死に物狂いにならせるにはどうするか?

 

再建のためとはいえチームが勝てないとお客の足は遠のく。今季最低観客数だったマーリンズもスタンドもガラガラ。これを防ぐためドラフトのあり方を変えようという流れになってきた=写真はイメージ


 2018年シーズンのMLBは観客動員数が減少、この15年間で初めて合計で7000万人を割った。17年が1試合平均3万42人だったのが18年は2万8830人だった。GM会議でスコット・ボラス代理人は、減ったのは、再建の名の下、戦おうとしないチームが増えているためだと近年行っている批判を改めて展開した。

 特にマーリンズについて、平均観客数1万13人はルイジアナ州立大の野球チーム(1万786人)より少ないと嘆いた。実際マーリンズパークは閑古鳥が鳴きスタンドの26.7パーセントしか埋まらない。1万13人は04年のエクスポズ(9356人)以来の少なさだ。

 あの年、同チームはモントリオールからワシントンDCへの移転を発表、地元ファンがそっぽを向いたからだが、今回はそうではない。ご存じのようにマーリンズは1年前、ジアンカルロ・スタントン、クリスチャン・イエリッチらMLBでも最高と言われた外野陣をトレードした。

 イエリッチは18年、打率.326、36本塁打、110打点でナ・リーグMVPに輝き、ブリュワーズをナ・リーグ優勝決定シリーズ進出に貢献した。一方でマーリンズは63勝98敗、地元ファンの足が遠のくのも無理はない。

 ほかにもオリオールズが47勝115敗、ロイヤルズが58勝104敗、ホワイトソックスが62勝100敗と、ア・リーグに100敗チームが3球団も出た。しかしながらGM会議最終日、ボラス発言について聞かれたMLBのダン・ハーレムコミッショナー補佐は「その考えには同意しない。毎年どこかのチームが再建をしているが、去年の再建チームは、今年はうまくやっている。それが原因ではなく、気候や、人々の楽しみ方の変化など、さまざまな理由がある」と反論した。

 実際、18年は序盤天気が悪く、史上ワーストの28試合が延期、4月は102試合が10度以下の寒さだった。一方で、高品質TVによる中継は臨場感抜群。わざわざ球場に行かなくても良いというファンも増えた。とはいえ今明らかに問題なのは、MLBのトップは認めたがらないが、ドラフトトップ指名権を得るために、一部で最下位争いになっていることだ。

 現行のルールだと、公式戦で一番成績の悪いチームが、翌年のドラフトでトップ指名権を得て、最大の契約金を使える(ボーナスプール)からだ。マーリンズが再建の目的で、主力選手を放出して若手に切り替え、時間をかけて強くしていく戦略的プランは認めるとしても、それでもその若手中心のメンバーで試合に勝つために死に物狂いであらねばならない。でないとゲームの高潔性が疑われる。

 そこで今、いろんなアイデアが出ていて興味深い。専門誌ベースボール・アメリカのJ・J・クーパー氏は2年連続70勝以上できないチームはドラフトの順番が10位下げられ、3年連続なら15位下げる案を出す。前述のボラス代理人は68勝できなかったチームはトップ5の指名権をもらう資格を失うとする。

 高名な野球記者ケン・ローゼンサルは8月1日以降の勝敗でドラフト順を決めてはどうかという。このオフ、こういったアイデアについて、球界が話し合う。再建チームであっても、ファンのため、目先の勝利にもっとこだわるべきなのである。
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