昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 江藤慎一の闘志
今回は『1965年8月30日号』。定価は50円だ。
セは巨人が2位の
阪神を8月10日から3タテ。7ゲーム差をつけ、独走態勢に入った。
打の主役は打撃2部門でトップに立つ
王貞治だ(打率.344、2位・
中日の
江藤慎一.323、24本塁打、2位・江藤20本、59打点、1位・
長嶋茂雄60打点)。すさまじい敬遠攻めを受けているが、「いい気はしないけど、打席が減って打率が上がりやすいとも言えるし、俺は嫌なことはすぐ忘れるからね」とさほどいらだった様子はない。
三冠王も話題となる中、巻頭では高島呑象次先生の占いがあった。三冠王については「意外なところで逆転されるでしょう」と言っていた。これだけ聞くと、江藤に打率で敗れたことをずばり当てたようにも思える。
ちなみに江藤は球宴後に打撃大爆発。12試合で4割9分、8本塁打、15打点の荒稼ぎをしていた。
「ホームランは怪物(王)に任せたよ。でも三冠はなんとしても阻まなければ。あのときこうすればよかった、ああすればよかったなどと言っても始まらん。男はくよくよせずに突っ走ればいい。ワシの場合は力のバッティングをやって結果が悪かったとしても悔いはない」
と豪傑らしい言葉で王の三冠阻止に闘志を燃やしていた。
一方、パの南海・
野村克也、阪急・
スペンサーのホームラン王争いは、スペンサーが55、6本、野村が51、2本と占った。こちらはスペンサーの事故もあって外れとなる。
また、巨人、阪神と優勝争いをしていた大洋は完全に失速した。
理由は
三原脩監督と選手の対立だ。首脳陣批判をした選手を二軍に落としたり、主力の
桑田武を中日、
近藤和彦を阪急にトレードしようとしたりした三原監督に対し、排斥運動も起こりかねない状況になっていたらしい。
ちなみにトレード話は、中部謙吉オーナーが「うちは大家族主義だから選手を放出することは絶対にしない。選手を商品のように売ったり、買ったりすることは反対だ」とすべてつぶした。
三原監督がチームを崩壊させたのか、それとも三原監督の言うとおりしていれば、ふたたび大洋優勝の可能性もあったのか。
いずれにせよ、このチームは以後、優勝からどんどん遠ざかっていくことになる。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM