一昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 平和台が荒れ模様?
今回は『1970年6月15日号』。定価は80円。
セ・リーグでは若者たちが躍動していた。
三番打者に定着した中日の新人・
谷沢健一が、5月27日、セの打率首位に立った。3割3分だった。新人としては異例ながら早くも後援会も結成されたという。
一方、26日現在で本塁打のトップは
阪神の2年目・
田淵幸一の11本。田淵は打点でもトップの
広島・
衣笠祥雄の21打点に次ぐ20打点だ。
「ホームランは30本を目標にしています。まだ大きなことは言えませんが、オールスターが終わったらタイトルを狙うかどうか決めます」
と話していた。実際、この試合まで22打席ノーヒットがあるなど、まだまだムラがあった。
無料開放で大賑わいの平和台外野席だが、いつも西鉄を温かく見ているわけではない。5月22日の阪急戦はひどいことになったようだ。1対11で大敗した試合だが、外野スタンドからヤジの嵐。時々、数人がグラウンドに降りて走り回る。
災難はライトの
東田正義だ。
「俺になぜ打たれるんだと怒鳴ってくる。絡んでくるようなヤジが多くて困る」
乱入したファンを止めようとした際には背中に向かって石が飛んできた。
「座布団ならいいが、石はたまらん」
とカンカン。
投げたファン(というのかな)は、「外野スタンドから敵ベンチは遠い。味方に流れ弾が当たることもあるよ」。
試合中、東映・
白仁天に暴行を受けた露崎審判が告訴した。本当は、そのまますまそうと思ったらしいが、前代未聞の告訴にふみ切ったのは、5月24日の夕刊紙に載った白の暴言だった。
「俺は本当はバットで頭からぶんなぐってやろうかと思った。でも、バットを使わなくても露崎には負けっこないからな(笑い)。それで向かっていって首投げにしてやったんだ。もし俺が本気で殴ってみろ、あんなもの審判できんよ。むこうは空手三段とか昔ボクシングやっていたかどうか知らないが俺も負けないと思うな。あいつは生意気だよな」
たぶん記者が「露崎審判が本気になったら負けないという声も多いが」とか、白をあおる質問をしたのだろうが、かなり軽率だ。
その後、白が謝罪し和解。告訴も取り下げた。
黒い霧は終わったわけではない。近鉄では
土井正博が賭博容疑で球団から出場停止処分を受けた。また、エースの
鈴木啓示が大阪府警で7時間にわたる取り調べを受けた。これは鈴木が「八百長を頼まれたが、断ったし、球団の上司にも報告した」と発言していたことを受けてだった。
すべて
三原脩監督が就任する前の話だったようだ。
かなり“汚れた”状態だった近鉄を、わずかな期間で“掃除”し、前年は優勝争いにも絡んだ。西鉄、大洋時代に比べ評価が高いとは言えない近鉄時代だが、名将・三原、さすがである。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM