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【MLB】大谷の目標はワールド・シリーズでも、エンゼルスの控え目補強の背景

 

エンゼル・スタジアムのすぐ隣を本拠地とするNHL・ダックスの試合で始球式に登場した大谷。「世界一」への思いを強く語ったが、今季のエンゼルスの補強は……


 エンゼルスの大谷翔平が1月23日にNHL、アナハイム・ダックスの試合で、地元ファンに新年初お目見え、始球式に当たる「パックドロップ」を行った。

 その前にFOXテレビのインタビューで今季の目標を聞かれ「ワールド・シリーズに出て優勝したいという気持ちは去年一年でまた強くなった」と力強く話した。しかしながら本人の熱い思いをよそにこのオフのエンゼルスの補強は控え目だった。ア・リーグ西地区には昨季103勝のアストロズ、97勝のアスレチックスがいて地区4位80勝のエンゼルスはチーム力で相当差をつけられている。

 思い切った補強が必要なのだが、一番の目玉は元メッツの29歳右腕マット・ハービー。15年は13勝8敗、防御率2.71でチームをワールド・シリーズ進出にけん引したが、過去3年は4勝、5勝、7勝で防御率5.39。かつて96マイル台平均だった真っすぐの球速は93マイル台に落ちた。それでも1年契約1100万ドル。1年900万ドルの31歳、トレバー・ケーヒルも20代前半に4年連続2ケタ勝利をマークしたが、過去6年は通算で27勝である。

 1年850万ドルのリリーフ投手、30歳のコーディ・アレンは5年連続インディアンスのクローザーだったが昨季の防御率は4.70。ハービー同様真っすぐの平均速度が落ち被本塁打数が2ケタになり三振数が減った。捕手は32歳のジョナサン・ルクロイでブリュワーズ時代は好守好打のオールスター選手だったが、フレーミング力もブロッキング力も劣化。打撃も昨季は.241で4本塁打。1年335万ドル。総じて昔は良かったが今は力が落ちた選手ばかり。言い方は悪いが継ぎ接ぎだらけのパッチワークなのである。

 しかしながらビリー・エプラーGMは1月末にオフの補強を「良い感じにでき上がった」と総括した。決まったのはすべて1年契約だが「おかげで融通がきく。今季も来季も新たな動きにオープンに適応できる」と説明した。エプラーは先発投手ではパトリック・コービン、捕手でウイルソン・ラモスらに複数年契約をオファーしたと明かした。

 だがナショナルズがコービンと合意した6年1億4000万ドルのような巨額のオファーは控えた。エンゼルスはあと2年でFAになるマイク・トラウトとの再契約のために、年俸3000万ドルから4000万ドルの枠は開けておかないといけない。大谷も調停権を得ると年俸が跳ね上がる可能性がある。

 アルバート・プホルスとの10年契約(残り3年8700万ドル)で痛い目を見ているだけに、巨額の複数年契約には慎重にならねばらない。MLBでは「1年契約に悪い契約はない」と言う。仮に前述の4人がすべて期待外れで3000万ドル前後の投資がムダになっても、2020年以降のチーム作りの足かせにはならないからだ。未来を担保にとらずチーム力を向上できたから「良い感じ」なのだ。

 そして先発投手陣の軸にと期待してきたタイラー・スキャッグス、アンドリュー・ヒーニーが突如大活躍し、トラウト、大谷を軸に打線が打ちまくれば、優勝の可能性がないわけではない。しかしながらエプラーGM自身も、本当の勝負は20年以降と考えているように見えるのである。

文・写真=奥田秀樹
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