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“考える虎”矢野監督。盟友とタッグを組み阪神を再建できるか

 

阪神再建にタッグを組む清水ヘッド[左]、矢野監督


 昨年、最下位に沈んだ阪神の再建に取り組んでいる矢野燿大新監督。虎の新指揮官がヘッドコーチとして招聘したのが清水雅治ヘッドコーチだ。矢野監督と清水ヘッドは現役時代、中日でチームメートだった。矢野監督の著書『考える虎』(ベースボール・マガジン社)によると清水ヘッドは尊敬できる先輩で、自宅もフロア違いで同じマンション。若手時代、午前10時には矢野監督が清水ヘッドの部屋まで車で迎えに行き、室内練習場へ行き、打撃練習で汗を流した後は、再び矢野監督の運転でナゴヤ球場へ向かっていた日々だったという。

 食事をともにしたときも野球談議に花を咲かせ、「どうすれば試合に出られるのか」ということを2人で言い合っていた。グラウンドでプレーすることに飢えていた若手時代に切磋琢磨した間柄だったが、清水ヘッドの視点からでも矢野監督は「後輩だけど尊敬できる存在」だという。

 春季キャンプ中、清水ヘッドには解説者の伊原春樹氏と対談してもらったが、そこで次のように語っていた。

「矢野監督は僕より年下ですが、すごく勉強されています。自分が恥ずかしくなるくらい勉強量が違う」

 清水ヘッドは1996年に中日から西武へ移籍したが、それ以来、矢野監督と同じユニフォームを着て、それをあらためて感じた。さらに共感したのが、選手に考えさせることを重要視していることだという。

「自分が成長するためにどのような取り組みが必要か頭を働かせ、手助けが欲しいときにコーチが寄り添う形です」

 矢野監督も現役時代、“考える”ことを重要視していたが、そのきっかけも前出の著書に描かれていた。転機となったのは同期の戦力外だ。3年目の93年のオフ、東北福祉大から同じ中日へ入団していた同級生がユニフォームを脱ぐことになった。毎年、10人近くの先輩、後輩がチームを去っていく姿を見てきたが、そのときにいつ自分がその立場になってもおかしくないということを実感したという。

 厳しい現実を目の当たりにして野球への取り組みが変わった。4年目からはナイターを終えると、自宅近くの公園で深夜に素振りをすることが日課に。与えられた練習メニューをこなすだけでなく、それ以外にも「自分に必要なことは何か」を考え、自主練習を繰り返した。

 そんなときに、そばにいたのが清水ヘッドだった。

 2019年、タッグを組んだこの2人が阪神を浮上させることができるか、注目したい。

文=小林光男 写真=BBM
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