昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 またも完全試合が!
今回は『1966年5月30日号』。定価は60円だ。
1966年、セ・リーグでは
広島が順調に首位を走っている。
5月11、12日は本拠地広島市民に2位の
巨人を迎えての首位攻防戦だった。
結果は1勝1分。連日、通路までいっぱいとなった球場は大騒ぎだった。初戦の1分はサヨナラのチャンスが走塁時の3フィートルールで消えたもの。物騒な雰囲気になり、観客が数人乱入したが、大事には至らず。これも首位の余裕か。
売り子は言う。
「今年のカープはホームグラウンドではほとんど勝っていますから、ビールはよく売れます。ただ、勝負の見通しがつくまではあまり売れません。緊迫した場面では“うるさい”と怒られますから」
球団公認応援リーダーの的場明治さんは、市電の運転手だが、このところ球場に入りびたり。
「開幕日には名古屋へも応援に行きました。今年はカープが優勝する年だと思っています。大事な試合は遠征にもついていきますよ。関西、東京などの広島出身の人たちが応援団を結成していますが、広島は本家本元ですから、じっとしておれませんわ」
巻き返しを図る巨人は2人の投手が頭角を現してきた。
藤田元司コーチによってサイドに変えた
渡辺秀武と
高橋明だ。特に渡辺はオーバースロー時代とは見違えるように球威も制球力もアップした。
5月10日、幻のホームランがあった。
左翼ポールに命中した大洋・
近藤和彦のホームランだ。9回裏、
伊藤勲、重松に続く、3連続、しかもサヨナラ本塁打になるはずの一打だったが、直前にタイムがかかっていたとして取り消しになった。
しかも、このタイムはライトスタンドから大洋ファンが瓶を投げ込み、それを広島のライト、
藤井弘が投げ出した際のもの、という。自軍のファンだけに怒るに怒れない。
大洋の
佐々木吉郎が5年ぶりに完全試合をしてから2週間も経たぬ5月12日、またも完全試合が誕生した。
大阪球場での南海戦、やってのけたのは西鉄・
田中勉である。
「パーフェクトを意識したのは9回だけです。きょうはシュートがよかった」
試合後、汗をダラダラ流しながらインタビューに答える田中。一方、やられた南海・
鶴岡一人監督も「こんな負け方、初めてや。田中はよう投げた。敵地でようやるよ」と脱帽。
東映映画に東映・
水原茂監督、
張本勲、
尾崎行雄が出演。タイトルは「地獄の野良犬」。梅宮辰夫主演のヤクザ映画であるが、3人は、もちろん、本人役。ヤクザ役ではない。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM