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MLB最新戦略事情

【MLB】好調レイズの実力は本物

 

パイレーツ時代はなかなか勝てなかったが、トレードでレイズに移籍し、今季4連勝のグラスノー。レイズ特有の戦略の中で成績をのばしている



 レイズが好調だ。4月17日の時点で14勝4敗、勝率。778は30球団ダントツの1位。得失点差+47も2位のマリナーズの+30を大きく引き離している。

 マリナーズも開幕ダッシュに成功したが先細りになるだろう。開幕から21試合で本塁打数42本、得点132(ともにリーグ1位)と打ちまくったが、打線は水物。長続きはしない。一方レイズは投手陣が本物。チーム防御率2.33、被打率.199はともに1位。186奪三振も1位である。ア・リーグ東地区にはレッドソックス、ヤンキースの2強の壁があったが、今年は2010年以来、9年ぶりに勝てるのではないか。

 USAトゥデー紙によると、レイズのサラリー総額は6990万ドルで29位。2億624万ドルのレッドソックス(2位)、1億6139万ドルのヤンキース(10位)を倒すのである。レイズは「オープナー」で知られるように斬新な考え方を持つチームだ。かつては聡明なジョー・マドン監督、アンドリュー・フリードマンGMがいたからと思っていたが、彼らが去ったあと(14年が最後)、その傾向はさらに強まりチームのDNAとなった。

 例えば、現在のメジャーは先発投手がクオリティースタート(QS)にこだわらず早めに交代し、ブルペンにパワーピッチャーを並べて継投で勝つ野球が主流。いち早く始めて結果を出したのが15年のレイズだった。

 先発投手は打線の最初の2巡をしっかり抑える。QS率が低くても防御率は良かった。今季も実績あるスター選手は少ない。15人のベンチ入りメンバーのうち、11人はフルシーズン上でプレーした経験がない。それでもアナリティックに基づいて上手に戦う。

 例えば配球だ。変化球が多く、直球はたった28パーセント。なぜならMLB打者のフォーシームに対する長打率は.491で、どの球種よりも高いからだ。レイズの投手はシンカーやカッターを多めに使い、カーブもうまく混ぜる。このチームは、実は昨季もオールスター以降はア・リーグで一番の勝ち星を挙げていた。

 その上で、巧みなトレードが功を奏しさらに強くなった。18年7月31日、オールスター投手のクリス・アーチャーを出し、実績のないタイラー・グラスノー投手とオースティン・メドウズ外野手を獲得。今季2人は開眼。グラスノーは4試合に先発して24イニングを投げ、4連勝、防御率1.13。パイレーツ時代は3年間で3勝11敗、防御率5.79だった。

 メドウズは今季17試合で打率.349、6本塁打、17打点である。18年12月にインディアンスから獲得したヤンディ・ディアズも打率.271、4本塁打とよく打つ。生え抜きの選手も上がってきた。リリーフ左腕のホセ・アルバラードは9試合に投げて8回1/3で4セーブ、無失点、13奪三振。彼のシンカーは99マイル(約158キロ)で鋭く曲がる魔球である。

 レイズは昨オフ、珍しくFA市場にも投資、チャーリー・モートン投手を獲得した。プラス、前述のトレードや若手の成長もあり、より層が厚くなった。レッドソックスとヤンキースも今後、きっと巻き返してくるだろうが、負けない戦力が整っているのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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