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「全元号下優勝」唯一の挑戦者・松山商

 

平成8年、夏の甲子園で頂点に輝いた松山商ナイン



 今年のセンバツで個人的に注目していたのは、高松商だった。理由は「改元」。改元前、平成最後の甲子園……この大会は、松山商に続く、高松商の「全元号下優勝」が懸かった大会だった。

 いわゆる夏と春の“甲子園”は、大正4年(1915年)に始まった夏の全国高校野球選手権大会、大正13年(1924年)に始まった春の選抜高校野球大会を指す。(ここで言う「全元号下優勝」は、春夏の区別はつけずに大正・昭和・平成の3時代すべてでの“甲子園優勝”ということにする)

大正時代は15年で幕を閉じているから、夏12回、春3回と、そもそも大会開催自体が少ないのだが(米騒動で中止なんてこともあった)。大正で甲子園優勝を遂げたチームを書き出してみると、京都二中(鳥羽)、慶應普通部(慶應義塾)、愛知一中(旭丘)、神戸一中(神戸)、関西学院中(関西学院)、和歌山中(桐蔭)、甲陽中(甲陽学院)、広島商、高松商、松山商、静岡中(静岡)、広陵中(広陵)と12校が並ぶ(カッコ内は現校名)。

 春は第4回、夏は第13回大会からが昭和だ。大正で優勝した学校で、昭和にも甲子園で頂点に輝いた学校を挙げてみると、高松商、和歌山中(桐蔭)、関西学院中(関西学院)、広島商、松山商の5校にまで絞られる。

 そして平成。春は第61回、夏は71回が平成最初の大会となった。大正、昭和と優勝を経験した学校の中で、平成にも優勝しているのは平成8年(1996年)夏の松山商のみとなる(松山商は平成で春2度、夏4度の計6度出場)。広陵は平成に2度(平成3年春、15年春)優勝しているが、昭和で優勝できなかった。

 桐蔭(和歌山中)は平成27年(2015年)春に21世紀枠で出場するも初戦敗退。関西学院は春夏1度ずつ出場も頂点には届かず。広島商は平成で計5度(春4、夏1)出場したが、平成14年(2002年)春の8強が平成最高成績だった。

 惜しかったのが高松商だ。平成28年(2016年)春に準優勝。決勝では延長11回まで戦ったが、智弁学園に敗れている。今年、平成31年の春は、松山商に続く「全元号下優勝」のラストチャンス。正真正銘「平成最後」の大会に、高松商は秋の四国王者として堂々乗り込んだ。しかし、2回戦敗退。これで、「全元号下優勝」は松山商だけになった。

 つまりこの先、令和も含めた「全元号下優勝」に挑戦できるのは松山商だけだ。平成27年(2015年)、高校野球は夏の第1回大会から100周年を数え、昨年には第100回大会を迎えた。「全元号下優勝」を続けている松山商は、100年間強さを保ち続けていると言っていい。

だが、松山商が最後に甲子園出場を果たしたのは、18年前。4強に進出した平成13年(2001年)の夏が最後だ。古豪と呼ばれて久しい松山商が、令和の新時代、唯一の挑戦者として再び聖地に戻ってくることを期待する。そして令和の先、100年、200年先も高校野球界をけん引してほしい。

文=依田真衣子 写真=BBM
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