昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 悲運のサブマリン
今回は『1967年5月15日号』。定価は60円。
前年限りで東映を退団し、内外スポーツの営業マンになっていた岩切正男。立正佼成会から63年の都市対抗後の入団だったが、一軍登板なく、3年半で解雇。サンケイのテストを受けたが、落ちてしまい、野球生活を断念した。
この岩切が東映を告訴した。契約金の未払いだ。
契約時に提示された全額は850万円だったのだが、最初に450万をもらった後は分割払いのはずが、未払いのまま。
どうやら間に入ったスカウトが横領したらしく、実は同じく東映の
永易将之も同じ担当スカウトで200万の未払いがあり、球団に請求すると、こちらはそのスカウトが個人で返済したという。
岩切は契約書も持っており、裁判になれば、このスカウトだけでなく、東映もただではすまないだろう。
4月25日、東京の
坂井勝二が東映戦で9回をノーヒットノーランながら10回表に1点を取られ、敗戦投手となった。
実は、この10日前、4月15日の西鉄戦でも8回までノーヒットノーランで9回に安打を許していた。
坂井はさらにさかのぼれば、65年5月1日の近鉄戦でも8回まで完全試合、ほか1安打ピッチングも2回と悲運の投手ではあった。
ただし、この年の東京打線は最悪。25日の試合で開幕から2度目の36イニング連続無失点となっていた。
坂井は試合後、「仕方がない。またやり直しです」と言いながらも「もうこんな記録に挑戦するのはやめた。神経ばかり使うしね」。
まだ初勝利のない
阪神の新人・
江夏豊だが、バットで非凡なものを見せている。
4月23日、
中日戦。0対7の劣勢となった試合に二番手で登場すると、最初の打席で場外弾となる2ラン、次の打席は2点適時打。大逆転勝利の立役者になった。
後藤次男打撃コーチが真顔で「打者に転向させたい」と言ったが、江夏は「たまたま打っただけです」と戸惑い顔。
4月22日の西鉄戦で、前年の5月1日から16連敗をしていた阪急・
梶本隆夫がようやく勝ち星。試合後は、「ありがとう」「ありがとう」を連発していた。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM