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ポジティブな空気間が生む粘り。三菱日立パワーシステムズが4年連続で都市対抗本戦へ

 

都市対抗本戦へ出場を決めた三菱日立パワーシステムズ


「粘り勝ち」

 今年の三菱日立パワーシステムズ(MHPS)の都市対抗野球大会西関東予選、代表決定リーグでの戦いぶりは、まさにこの言葉がぴったり当てはまる。

 5月28日、横浜スタジアムで行われた代表決定リーグ2日目のJX-ENEOS戦では6回終了時に0対4と試合中盤まで完全に相手のペースにのみ込まれていた。しかし、7回に1点、8回に3点と盛り返す。雨風が強まる中、4対5で迎えた9回表、代走から途中出場していた江越海地外野手が逆転2ラン。6対5で強豪・JX-ENEOSを破り、西関東地区第一代表の座を手に入れた。

 MHPSの攻撃が終了したころには、降りしきっていた雨も落ち着き、球場は見事な逆転劇の余韻と熱気に包まれていた。

代表決定リーグ初戦の東芝戦で完投勝利をマークした大野


 この日は打線の粘り強さが光る試合展開だったが、前日に行われた代表決定リーグ1日目、東芝との一戦は先発投手を任された大野亨輔投手の粘り強い好投が勝利のカギとなった。

 大野は昨シーズン、左ヒジの腱を右ヒジに移植する大手術を行い、登板機会を失っていた。1年間ベンチで味方の試合を見続ける日々が続き、「投げたいという気持ちが強かったが、まだ状態は万全ではない。1年間は休養期間と考えて我慢をすれば必ず結果が出せるだろうと信じ、苦しかったが耐えた」と振り返る。

 東芝戦では先制点こそ許したものの、試合終盤に近付くにつれて状態が良くなり、打線の後押しもあり3対2で完投勝利。代表決定リーグの初戦で先発を任されたことにプレッシャーはなく、純粋に野球を楽しもうというどこか落ち着いた気持ちで試合に挑むことができたことが奏功した。

「去年、チームを牽引した奥村政稔投手(現福岡ソフトバンクホークス)がプロ入りしたため、投手層は昨年よりも薄くなったと実感している。自分がやるしかないという気持ちが強い。今シーズンからは副キャプテンに就任したこともあり、さらに責任感が増した。去年、1年間チームに迷惑をかけた分、今年はイニング数でも試合数でも今までの倍以上投げて、チームの勝利に貢献したい」

 JX-ENEOS戦、0対4と点差をつけられた状況でも、ベンチ内は「いつか必ずチャンスが来る」と前向きだったと大野は話している。このポジティブな空気感が、選手たちの逆境に強い精神力につながっているのだろう。勢いを生かして、4年連続11回目の出場となる都市対抗本戦の東京ドームでも粘り強いプレーを期待したい。

文・写真=豊島若菜
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