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週べ60周年記念

毒舌解説者・広岡達朗に金田正一が怒る?/週ベ回顧

 

 昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

根が深い東映のスカウト問題


表紙は左から阪神江夏豊村山実


 今回は『1967年8月14日号』。定価は60円。

 1967年のオールスターはパ・リーグの新しい風を感じさせるものとなった(初出修正)。
 MVP(殊勲賞)は第1戦が2本塁打、6打点の近鉄・土井正博、第2戦が先制3ランの阪急・長池徳二、第3戦が史上2目の満塁弾含む7打点の東映・大杉勝男
 パの誇る若武者たちのバットで、まさにセを粉砕した。

 第1戦、ラジオ関東の解説者を務めたのが、巨人を退団した広岡達朗だ。約4カ月のアメリカ“野球留学”から6月に帰ってきた後、解説者の仕事を始めた。
 とにかく毒舌。そして、やたらとメジャーと比較する。
「あんなエラーはいけませんよ。プロ野球ですから。あんなことは大リーグでは許されないことですよ」

 古巣巨人への舌鋒も鋭い。
 7月14日、巨人─広島戦で8回二死の後、好投していた巨人・中村稔が死球を出した。川上哲治監督が「当たってないなのか」なのか「逃げてないじゃないか」かはわからぬが、抗議に出て、帰り際、ついでとばかり金田正一に交代させた。
 広岡は、
「ここは中村に投げさせてやるべきですよ。金田は自分でリリーフを買って出たんでしょう。勝手すぎます。よしやったるで、で出られたんでは中村も頭にくるでしょう。それに監督の投手交代のやり方もおかしいですよ。抗議にいって、中村のほうも見ずに交代でしょ。かわいそうですよ」
 あとで、それを聞いた、金田が怒った。
「投手が勝手に登板するなど巨人では許されない。出ろと言われたから出たまでだ」
 ということは、国鉄では勝手に登板していたのか。

 川上の石橋をたたいて渡る、いな、たたいても渡らない野球の対しての批判もある。
「プロ野球はスポーツであると同時にショー的要素も必要だ。豪快な力で争い、迫力あるゲームを展開してこそ、ファンにアピールするものがある。
 いまのような型にはまった巨人野球を全球団が取り入れたらまったくつまらぬものになってしまう。サッカーに食われるのは目に見えている」
 ブレない人だ。


 前年秋のドラフトで大洋に指名された日本石油の平松政次。大洋の交渉期限は8月10日に切れるが、身辺がにわかにバタバタしてきた。
 平松の意中は巨人。これは周知の事実。この年の秋のドラフトで巨人の指名を待っているのでは、と言われていた。

 ただ、実は巨人のスカウト陣が内紛状態にあったらしい。
 巨人で平松獲得に動いていたのは、内堀保スカウト部長だったが、球団上層部は、沢田幸夫スカウト変化球の評価が高く、66年堀内恒夫、67年槌田誠も沢田スカウトが担当だった。
 7月20日には、外部から前川八郎を迎え、スカウト担当総務に。内堀は部長から部次長に降格した。内堀が熱心だった平松獲得の動きは、沢田派に負けたのか、消えたようだ。

 以前書いた岩切事件の続報があった。
 63年9月に東映入り。前年限りで退団した岩切正男が、入団時に契約した850万のうち400万しかもらえず、訴訟を考えているという話だ。
 岩切は、ついに「横領、公文書偽造」で東映のAスカウトを告訴した。
 
 Aスカウトのピンハネは常習だった。
 いろいろ書いてあったが、推測も交えれば、こういうことではないか。
 球団から現金で契約金をもらい、選手と契約書をかわす。その際、交渉の際、お世話になった人への謝礼などと言って何割かを“抜く”のは、そう珍しいことではなかったようだ。
 実際、アマ関係者に一部を渡していたのは、間違いなく、自腹が多いスカウトの活動資金にもなった。

 ただ、Aスカウトの場合、全額を渡さず、分割払いにした。
 この人は副業として芸能関係の会社、スロットマシン販売会社などを設立しており、その資金に回し、利益の中で返していこうということだったようだ。
 だが、いずれも倒産。結果的に選手への契約金払いが滞った。
球団に在籍している選手は何となく我慢していたが、岩切はすでに退団しており、訴訟となった。
 なお、球団が保管していた契約書は850万を400万台に改ざんされていたらしく、それが「公文書偽造」になった。

 同じようにピンハネされたが、Aスカウトが自腹で返却し、解決したといわれていた永易将之は、実家に暴力団風の人物がきて親を脅し、泣き寝入りしたとも言われる。
 根は深い。悪意は人の心の隙間に知らぬ間に入り込み、伝染していくのだろうか。

 では、またあした。
 
<次回に続く>

写真=BBM
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