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【MLB】投手に目玉がいなかった今年のMLBドラフト

 

カブスは、2014年のシュワーバー(写真)を低い契約金で抑えたことで、下位の選手をやや高額で獲得し、トレード要員にできた。今年のドラフトで上位指名をどれくらいの契約金で獲得できるだろうか




 今年のMLBドラフトは投手に人材を欠いた。最初に指名された投手は、レッズの一巡7番目、UTC(テキサス・クリスチャン大)の左腕ニック・ロドロ。トップ10で投手は一人だけ。一巡の32人の選手の中では10人だけだった。

 各チーム、ドラフト前に1000人を超すアマチュア選手をリストアップするが、全体的に見ても「大物が少ない不作の年」の評価だった。一つの理由は現在のドラフトシステムにあると見られる。各球団、使える契約金は指名権につくスロットバリューを足し合わせたもので、例えばオリオールズの一巡一番目の指名権のバリューは841万ドル、二巡以降のほかの指名権のバリューをすべて足しあわえると1382万ドル。仮にオリオールズがトップ指名のアドリー・ラッチマンより低い金額で合意できれば、差額を下位で指名した選手に使える。

 そのやり方で近年、大学進学を決めていた高校の大物選手を翻意させるケースが少なくなかった。例えば2014年のドラフト。カブスはカイル・シュワーバーを一巡4番目で指名、スロットバリューは462万ドルだったが、312万ドルで合意。その差額を使って、バンダービルト大進学を決めていた六巡、高卒右腕ディラン・シースを翻意させた。

 彼の指名順のスロットバリューは26万6000ドルだったが、150万ドルをオファーできたのである。彼は順調に成長、17年7月ホセ・キンタナをトレードで獲得したとき、エロイ・ヒメネスとともにホワイトソックスに交換要員となった。シースの昨季のマイナー成績は12勝2敗、防御率2.40である。

 もともと高卒投手は、大学選手、高卒野手よりも、ものになるかどうか不確かで、一巡指名にはリスクがあると言われてきた。だから上位で指名されることは少なかったのだが、システムを利用し、契約金を浮かせたことで、ドラフト上位レベルの契約金を払え、青田刈りが進んだのである。

 さて普段から主に取材しているカブスだが、以前もこの欄で書いたように、生え抜きの投手が育ってこない。そこで今年も一巡指名権(27番目)を使ってフレズノ州立大の21歳、ライアン・ジェンセン投手を指名。トップ5指名のうち4人が投手だった。

 意外だったのはジェンセンが183センチ、80キロと体は大きくなく、投げ方も特徴があり(ケガの心配がある)、昨年までは成績が悪かったこと。MLB公式サイトが発表するトップ指名候補には名前がなかった。

 カブスのドラフト責任者ジェイソン・マクロードは「ジョン・レスターのような大きな体ではないし、前だったら指名しなかった。だが、私たちはアマチュア投手の評価の仕方を変えている。よりアナリティックを参考にしアスレチシズムを重視している」と説明する。

 ちなみに彼のスロットバリューは257万ドルで合意金額はこれ以下になりそう。ソフトバンクのカーター・スチュワート・ジュニアが日本を選んでなければ、今回は二巡上位指名の予想でスロットバリューは140万ドルから170万ドルだった。アメリカのアマチュア投手たちがスチュワートの契約をうらやましがっているのは間違いないのだ。


文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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